只今俺の妻は死んだふりをして出迎えてくれています。【赤葦京治】 (ページ28)

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「……これは…………」

部屋の中に居たのは、音駒、梟谷、烏野、青葉城西の元バレー部全員が揃っていた。

「……！A！赤葦！！無事だったのか！」

俺達の存在に気が付くと、みんなが一斉に「何もされてないか」「いつ捕まった」などの質問を投げかけてくる。

よく見ると全員手錠をかけられていて、身動きが取れない状態だった。

「…………おかしいよ。」

俺にAが耳打ちする。

その顔は少し焦っているように見えた。

「……この男の人1人でこの人数を連れてきたの？もし街中で乱闘になったりしたら警察沙汰になっちゃうし……………」

………それもそうだ。

この人数を1人で相手するなんて相当の手練れか、もっと他に人が居るはず。

なのに廊下を歩いていたとき、声は愚か、まったく人の気配を感じられなかった。

「……とりあえず、今は無事に逃げる事だけを考えよう。」

「……うん。」

途端に、騒めきが起こる。

「……っ！？」

ずっと黙っていた男が顔を上げ、いきなり銃を取り出したからだ。

その男は低い声でこう言い放った。

「…………俺の目的は、ない。」

「………は？」

男は、狂ったような表情をしていた。

「人を……………」

.

「たくさん殺したいだけだ。」

背筋が凍りつく。

男は不敵に笑い、Aの腕を引いた。

「目が、もう狂ってる………！」

木葉さんが恐怖と驚きの入り混じった顔で言う。

他のみんなは恐怖で固まっている。

Aの足も微かに震えていた。

.

「…………しょうがない…………」

そんな呟きは、誰にも聞こえなかった。