只今俺の妻は死んだふりをして出迎えてくれています。【赤葦京治】 (ページ32)

今日:6 hit、昨日:7 hit、合計:322,703 hit

31 ページ32

俺は、「手術中」と灯るランプの前に居る。

Aはあの後救急車で運ばれ、緊急手術が始まった。

他の人達は全員Aの事が気掛かりな様子だったが、警察に詳しいことを話すために、全員警察署へと向かった。

勿論、犯人は黒尾さんが連れて行った。

俺達2人だけは後で取り調べを受けるらしい。

2.3時間後。

「手術中」のランプが消えた。

中から手術服を着た医師が出てくる。

「先生、Aは………？」

「急所には当たっていなかったので、大事には至りませんでした。今は麻酔で眠っている状態です。」

そう聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。

いくら頑丈でも人間だし、しかも女だからな。

銃弾が当たったという事だけでも結構な惨事なんだし…………

ガラッ

「……！！A………………」

手術室の扉が開くと、麻酔によって寝ているAがキャスター付きのベットで運ばれてきた。

Aの右肩には、包帯が巻かれていた。

すぐにAを乗せたベットを追いかけようと思ったが、医師に「少し話があります」と言われ、呼び止められた。

医師の後について行くと、診察室の様な部屋へと案内された。

椅子に座らされ、途端に医師の顔が真剣な顔つきになった。

それにつられて、俺の顔も少し硬くなる。

「……奥さんは、今までに何度かこんな経験をしているのですか？」

「え……？いや、俺の知る限りではそんな事は…………」

「そうですか」と呟く医師を前に、俺はある事を思い出した。

「………いや、今までにあると思います。……どうしてそんな事を？」

「奥さんの体には、複数の撃たれた傷や跡や、刺し傷の跡などがあるんです。」

ああ………やっぱり………

「…多分ですが……妻は、元々不良だったので、他の不良やヤクザなどと度々乱闘を起こしていたそうなんです。」

そう言うと、医師は理解したようで、顔を少し緩ませた。

恐らく俺がいつも何かAにしているのかと思っていたのだろう。それか、ヤクザと思われたか。

「ああ………それで撃たれたり刺されたりしてたのですね。

……いやまあそれでも驚きなんですけどね。」

「……はい。」

Aは前に、色々な喧嘩の話をしてきた事がある。

その時についた傷などを見せてきた。

本人は普通に話していたけど、聞いている俺には不安要素があり過ぎる話だった事を覚えている。

………まあとりあえず、Aが無事な様で良かった。