怪盗キッドについて ページ43
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「ぼっちゃまが近頃イギリスによく向かわれるのは、やはり気になる方でも出来たからですか」
寺井がビリヤード台の清掃がてら、突拍子もなくそんな話を挙げるものだから、快斗は手できっていたカードを床にぶちまけた。
「ばッ、何言ってんだよジイちゃん!」
動揺する快斗を意外そうに見る寺井に、快斗は耳まで赤くさせながら言い返した。
それに対し、寺井は不思議そうな顔で、呟くように答えた。
「何と言われましても…。それではそのような方はまだいらっしゃらないという訳ですね」
すると、快斗の歳にしては珍しいがイギリスが気に入ったのだろうかだとか、高校生ひとりの月一の海外旅行は危険だとか、的外れな話を続ける寺井。
快斗は適当に話を聞き流していたが、その脳裏にはやはりAの姿が思い描かれていた。
「盗一様と千影様が出会われたのは、十八年前のフランスのパリのことでした」
しみじみと懐かしむような寺井の声が聞こえ、快斗は「オレには関係ない話だって」と声を上げた。
しかし寺井には快斗の抗議は聞く耳を貸さないのか、それとも耳に届いていないのか、目を閉じて当時を思い浮かべるような仕草をとった。
「盗一様は素顔の殆ど分からぬ千影様を一目見て好きになったと度々申されていました。一目惚れだったと……そしてお二人は、快斗ぼっちゃまに何かあった時は手助けしてやって欲しいとこの寺井に仰いました」
「……親父と母さんが?」
快斗は最初信じがたいと顔を顰めていたが、寺井の真っ直ぐな顔をみて、最後は仕方なく折れた。
寺井は何も意地悪で快斗の恋路の手伝いをしようとしている訳ではないのだ。
「…確かに…イギリスにいるにはいるけど……今は手助けも何もいらねーからさ。その代わり、困った時はアドバイスぐらいしてくれたら…」
それでいいと、頬を掻きつつ小さく呟いた快斗に、寺井は安心したように微笑んだ。
快斗は照れ臭いのを誤魔化すように床に散らばったカードを拾い集め始めた。
そして、寺井はそんな快斗に嬉しそうに頬を弾ませ、また呟くのだった。
「これでようやく千影様にいい報告ができます」
「ジイちゃん!!」
開店前のブルーパロットに、快斗の悲鳴に近い叫びが響くのだった。
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恋 - 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
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