怪盗と約束 ページ31
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イギリス行きの航空券を申し込みながら、快斗は次に向かうドイツへの新しい予告文を考えていた。
学生身分のため、亡き父、黒羽盗一のようには諸外国を頻繁に訪れることはできないが、それでも世界を見せると約束したからには様々な土地の写真を送ろうと、快斗も気炎を上げていた。
今までは、盗み出すたびに盗品がパンドラではないと知り、空虚な気持ちを味わうばかりだった。
しかし、Aに写真を届けることも目的となった今は、以前よりずっと意欲的になれた。
しかし、予告文を書く最中、寺井から電話がかかり快斗は電話を取った。
「…もしもしジイちゃん?」
「快斗ぼっちゃま大変です、ぼっちゃまの名を騙るものが現れましたぞ。今資料を送りますからそれをみてください」
快斗は寺井の言葉に片眉をあげ、手を止めた。
電話を切った後、快斗はまたかとうんざり顔になった。
怪盗キッドの名を使い、悪事を働く者が現れることは間々ある。その度に快斗は濡れ衣を晴らすためにも真の怪盗キッドとして現場に潜入するのだ。
数分後、寺井から送られてきたメールを開き、快斗は今度はどんな内容だ、と手を擦り合わせた。
「『烏丸蓮耶』『黄昏の館』……『神が見捨てし仔の幻影』…」
成る程、今度のは一味違うかもしれないなと感じ、好奇心が掻き立てられ、快斗は招待内容に目を走らせた。
『貴殿の英知をたたえ我が晩餐に御招待申し上げます』という招待状が送られているという記載がある。
我が晩餐に御招待という文字列を、「随分気前がいいことで」と、呆れ顔で快斗は眺めた。
そして、その後の補足に視線を移らせ、目を見開いた。
「…ん? 二百万の小切手…?!」
各々の探偵に二百万の小切手が送られているのだそうだ。
自分の名を使っているのだから、怪盗キッド自身にまずは五百万ほど送って欲しいぐらいだと快斗は思った。
しかし残念なことに快斗は無賃金で自分の汚名返上に向かわねばならない。不条理だなと思わずにはいられなかった。
ひとまずドイツ行きは中止にして、こちらを優先させねばならないようだ。
快斗は折角書いた予告文を泣く泣く足元のシュレッダーに挟み込んだ。
Aにドイツの風景写真を送る筈だったが、これは妖怪屋敷の写真を送る羽目になりそうだな、と快斗は薄い苦笑を顔に登らせた。
快斗の目の先には、『黄昏の館』という名の今にも崩れそうな荒廃した館の写真があった。
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恋 - 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
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