六月十四日 ページ9
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空は真っ白な雲で覆われていたけど雨が降る予報は出ていない。
少し肌寒くてスカートを履くのに抵抗があったが、校舎の中は幾分かマシな温度で安心した。
いつも通り授業を受けていつも通りの放課後がやってくる。
と思ったら偶然にも目の前を通った私とのんちゃんに担任から仕事を頼まれた。
何かで使う資料をまとめてほしいとのことだった。
用紙の束がいくつかあって、それを重ねてホチキスで留める。
一冊の冊子になるように仕上げてほしい、と。
私達は仕方なく引き受けることにした。
ハルカとアイちゃんは最後までのんちゃんと絡んでいたが、何かの時間に間に合わなくなると言って走って出て行った。
広いようで狭い教室に二人きり。
用紙を重ねる作業から取り掛かる。
「 …ほんまに神ちゃん迎えにこーへんのな 」
「 いくら先輩に目をつけられるかもしれないからって言っても寂しいな〜 」
「 俺やと神ちゃんの代わりにはならへんか？ 」
「 全然ならない 」
「 ショック 」
数枚の用紙を揃えるため机にトントンと音を響かせる。
秒針の音が聞こえるくらい静かな教室に神ちゃんは現れない。
「 逆にAにとって不利やと思うけどな 」
「 不利？どうして？ 」
「 神ちゃんと付き合ってるやろ？最近まで二人で帰って周りに教えとったくせに今度は俺と二人で帰ってんねんで？別れたんかな、二股かな？って思われる気せーへん？ 」
「 ……確かに 」
「 寮のこと周りに教えたら多分女子がやってくることになると思うから声を大にして言わんでもええけど、俺とAが一緒に帰る必要ある？ 」
「 提案しといてなんだけどない気がする 」
「 せやろ？でも俺個人としては神ちゃんと帰らへんねやったらお前と帰りたい 」
「 待って、話矛盾してない？ 」
「 自分でもそう思ったわ(笑) でもせっかく同じクラスで同じ場所に帰るんやったら一緒に帰ってもええかなって 」
「 結局は私と帰りたいのね？ 」
「 うん 」
何だかんだ言って私と帰りたいらしいのんちゃん。
気づけば彼の手は止まっている。
「 神ちゃんにこの話をしない限り帰れるけど 」
「 少しの間言わんとこうかな 」
「 ほんと私のこと好きだね 」
「 別にええやろ 」
止まっていた手が用紙を捕まえる。
一枚一枚重ねてまとめる作業を繰り返す。
手止まってんで、と先程まで自分もそうだった彼に言われて我に返った。
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作者名：ひよこ | 作成日時：2019年5月17日 18時
