糸 ページ39
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ゆっくり自分の言葉で全てを伝え終わると神ちゃんは小さく、そっか、と呟いた。
そしてそのままこう続ける。
「 何も知らんで一人にさしてしまってほんまにごめんな。しんどかったよな 」
「 神ちゃんが謝ることは一つもないよ。拒否できなかった私が悪い。嫌って言えばよかったのに 」
「 悪いのはのんちゃんやで。俺のAに手出したらどうなるか分かってんのかって今までめっちゃ言うてたよな、俺 」
「 確かに何度も言ってた。でものんちゃんとそうなってしまった以上、私はもう神ちゃんの隣には居られないと思ってる。人として最低なことして本当にごめんなさい 」
「 いや、もしかしたらお互い様かもしれん 」
不思議に思い彼を見る。
こちらを見ることなくそう言った神ちゃんは一度咳払いをして続けた。
「 その…キスしてのんちゃんのこと好きになってしまったんかなって思ったって言うか…俺に飽きてのんちゃんに移ったんかなって勝手に考えてん 」
「 違うの、お願いこれだけは信じて。私神ちゃんのこと一度も一ミリも飽きたなんて思ったことないよ。重いかもしれないけど神ちゃんのことしか考えてなかったから 」
「 ほんまに？ 」
「 嘘言わない。いくらのんちゃんと同じ時間過ごしてても、帰ったら神ちゃんに何話そうかなとかどこ行こうかなって考えてた 」
「 あーーー、やってもうた 」
やっとこちらを向いてくれた神ちゃんの目は若干潤んでいる。
眠いのかもしれない。
「 俺から別れようって言ったみたいなもんやけど…俺も嫌いになんかなれへんかってん 」
「 すごく嬉しい 」
「 Aはまだ俺のこと…？ 」
「 好き 」
「 じゃあ俺らまたやり直さへんか？次はもう誰にも触らせへん 」
「 …ごめん、それはできない 」
そう言った私に神ちゃんは驚きの表情を見せた。
「 な、何で？好き…でいてくれてんねやろ？ 」
「 好きなんだけど神ちゃんのこと裏切っちゃったからケジメとして 」
「 …大人やな 」
「 それに今は大切な時期でしょ？私が言える立場じゃないけど私と遊ばないで今だけは頑張ってほしい 」
「 それ言ったら終わりやわ 」
神ちゃんが久々に近くで笑うから嬉しくなって思わず抱きついた。
背中に手を回してくれる神ちゃんは優しく幼い子をあやすようにリズムよく背中を叩く。
絡み合っていた糸が解けるような感覚で長いことそうして体温を感じ合った。
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作者名：ひよこ | 作成日時：2019年5月17日 18時
