八月一日 ページ38
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夏期講習が終わり本格的に夏休みがスタートした。
三年生は夏休み関係無く講習がある。
私はなるべく生活リズムを崩さないようにいつも通りに起床し、なるべく年上組の機嫌が悪くならないように言動に心掛けた。
夏休みを満喫している私を見てイライラしないように。
相変わらず私と神ちゃんは一言も話すことなく同じ屋根の下で暮らしている。
彼と話さずとも生活できるんだと思うとおかしかった。
偶然か分からないがこれまで二人きりになったことは一度もない。
もしかしたら流星さんとしげが気を遣ってそうしてくれているのかもしれないが、その心遣いが今の私にとって有難いものだった。
いつまでもこの状態ではいられないが、今だけは二人に甘えようと思った。
と考えていた矢先、夜遅い時間、みんなが寝静まった深夜。
急にヤケになってお水を大量に摂取したせいで目を覚ましてしまった私。
眠い目をこすりながら廊下を歩いて御手洗いまで行き用を済ませて洗面所で手を洗う。
そしてその場から立ち去ろうとした時に誰かとぶつかってしまった。
それは大好きだった香りでいつも隣にいた神ちゃんだった。
顔が見えなくても分かった。
「 ごめん、電気つけておくね 」
「 あ、うん 」
それだけで会話は終わりだと思って歩こうとすると既に懐かしいと感じる声で呼び止められる。
振り向くと洗面所の明かりが神ちゃんの顔の半分だけを照らしていた。
「 久しぶりに話さへんか? 」
「 ……いいけど眠れないの? 」
「 話したくなっただけや 」
そう言って御手洗いに入っていく彼。
言葉ではっきりと別れを告げた訳でもなく、私とのんちゃんがどういった経緯でキスをしたのか知っている訳でもない神ちゃん。
素直な気持ちを、夜のテンションとやらで全て吐き出してくれることを思って神ちゃんと一緒にリビングに入った。
椅子ではなくソファーに並んで座る。
久しぶりのこの感じに緊張する私。
時計を見ると午前三時を指していた。
秒針の音を聴きながら何かのタイミングで神ちゃんがゆっくりと口を開く。
「 あの日、俺らが別れた日。のんちゃんと何があってん?何も聞かないで今日まできたけど、ちゃんと聞かないとあかんなって思って 」
「 …講習が終わって寮に行くのにもちょっと暑すぎたから学校でお昼食べて行くことになったの 」
その時あったことをそのまま伝えた。
あの日と同じように涙が溢れてきた。
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作者名:ひよこ | 作成日時:2019年5月17日 18時