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スリル ページ4

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こもった雨の音を聞きながら神ちゃんと手を繋いだまま廊下を歩いた。

誰ともすれ違わずに辿り着いた空き教室。

大きな音を立てて扉を閉めた。

バラバラに置いてある机と椅子、適当に近くにあった机に腰かけた神ちゃんは無言で手招きをする。

ジッと見つめながら近づくと手招きをした手がゆっくりと私の腰へ回ってくる。

少しずつ距離が縮まってあと数センチで唇が触れるところまで来た時。





「 あっ 」





扉が開いて誰かの驚く声が聞こえた。

その声に驚いて思わず抱きつくと支えられていた手に力が入ったのが分かった。

神ちゃんだけに見える声の主。

この体勢のまま話し始めた神ちゃんの声が私の体に響いてくる。





「 ごめんな、取り込み中やねん。見なかったことにして出てってくれるか 」


「 は、はい!ごめんなさい 」





同い年か後輩の女の子が雨音に混ざって走っていく音が聞こえる。

その音が聞こえなくなったと思うと神ちゃんは私の顔を両手で挟みそっと唇を重ねた。

学校でのそれはとても刺激が強い。

また誰かが来るかもしれないスリルに怯えながら何度も重ね合う唇。

腰かけていた机が床と擦れて音を立てる。

腰から太ももへ移動する彼の手をそっと離すとその途端に止まるキス。





「 ここから先はできない 」


「 何でや 」


「 学校だから 」


「 我慢できひん 」


「 ダメ 」





体ごと離れるとヒリヒリと唇が痛んだ。

眼光が鋭い。





「 サクラ達とどうして話してたの 」


「 雨が止むまで話そう言うからやで 」


「 断ってよ 」


「 ごめん 」





少し乱れた制服を直してその場から離れた。

咄嗟に神ちゃんは名前を呼んで肩を掴む。

その力が強くて体が彼の方に向けられる。





「 今は…今は何もしやんからもう少しだけここで待たへんか? 」


「 本当にあれ以上何もしない? 」


「 うん。せやからこっち来て 」





腕を引っ張られて体を引き寄せられる。

そのまま窓の近くまで歩いて外の様子を一緒に見た。

先程よりはマシになった雨。

少し目線を下げると色とりどりの傘がまるで花を咲かせているように自由に動き回っていた。





「 雨降ったらここで傘眺めるのも暇つぶしになるな 」


「 今日みたいに雨が強い時はまた来てみる? 」


「 多分誘惑に負けるかも 」





あれ以上を求めてくるということだ。

寮とは違う学びの場で体を重ね合うのは以ての外。

キスすら抵抗があるから尚更だ。







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六月八日→←雨



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作者名:ひよこ | 作成日時:2019年5月17日 18時

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