シャワー ページ30
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のんちゃんと扇風機を乗せていたであろう軽トラと寮の近くですれ違った。
これのんちゃんが自転車でもよかったよね?
イライラをペダルを漕ぐパワーに変えて最後の力を振り絞る。
辿り着いた頃には汗だくになってしまった。
これじゃあ扇風機よりエアコンのほうが個人的に需要がある。
駐輪スペースに自転車を停めてエントランスへ入る。
ほんの少しだけ涼しい空気に包まれ、すぐにリビングへ。
箱から扇風機を取り出そうとしているのんちゃんが私を見て目を見開いた。
「 シャワー!シャワー浴びて汗流してこい! 」
「 え、あ、うん 」
文句を言う間も無く着替えを用意してシャワーを浴びた。
水が冷たくて気持ちがいい。
サッパリした私は髪の毛を乾かすこともなくリビングでのんちゃんの様子を見に行くことに。
と思ったら玄関の外から声が聞こえすぐに扉が開いた。
お客さんだったらやばいと思ったけど神ちゃんの姿が一番に目に入ったので安心した。
「 ちょ、そんなに暑かった? 」
「 汗だくだったからシャワー浴びちゃった 」
「 早よ髪乾かしや!のんちゃんは? 」
「 そっちで組み立ててる 」
「 「 「 組み立ててる? 」 」 」
三人は声を揃えて不思議そうに私を見る。
リビングを指差して三人を向かわせるとそれぞれが驚きの声を上げた。
タオルを頭に巻いてリビングの入口からその様子を見てみた。
しげとのんちゃんが話している。
「 もしかして新しい扇風機? 」
「 うん。壊れたから寮母さんに相談して買ってきた 」
「 小瀧一人で行ったん? 」
「 ちゃうよ、Aも一緒 」
「 どうやって持って帰ってきたん?担いで? 」
「 俺が配達サービスの軽トラであいつはチャリ 」
「 あ、せやからあんな格好で出迎えられたんか 」
「 めっちゃ汗かいて帰ってきたんやもん、神ちゃんには見せられへんと思ってな 」
「 俺の女雑に扱うとはええ度胸してんなあのんちゃん? 」
骨を鳴らして威嚇する神ちゃんをまあまあとなだめる流星さん。
のんちゃんは完成させた扇風機を見ながらひとつ溜息を吐いた。
「 壊れた扇風機はどこ?引き渡してきた? 」
「 あ、引き渡せばよかった! 」
新しい扇風機で頭がいっぱいだった私達。
神ちゃんは、寮母さんに頼もうと言ってコンセントをさしてスイッチを押す。
涼しい風が少し遅れてやってくると幸せな気持ちになった。
呉々も物は大切に。
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作者名:ひよこ | 作成日時:2019年5月17日 18時