七月十八日 ページ27
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蝉の鳴き声が脳内に響き渡る。
この前の雷に比べたら恐怖心は全くない。
夏が来た感じがしてとても聴き心地がいい。
「 先生ぇ！これ夏休み中にできる気がしないんですけどー！ 」
夏を耳で感じていると隣から大声で先生に文句を言うのんちゃん。
その瞬間蝉の声が少し減ったような気がした。
「 一ヶ月間で終わる量やから大丈夫。今日から始めたらええやん 」
「 それでも無理やわ 」
「 無理ちゃう。遊びたいんやったらバーッと終わらしてバーッと遊べばええねん。小瀧ならできるやろ 」
先生の言葉に渋々頷くのんちゃんは蝉の抜け殻のようになってこちらを見た。
「 分からん問題あったら教えてな 」
「 それは私も分からないから先輩に聞いて 」
「 お前だけが頼りやねん、頼む 」
両手を合わせて、この通り！とお願いしてくるのんちゃんに少し見栄を張って、仕方ないな〜と言ってあげた。
単純なのんちゃんはその言葉に喜んで机の上に山積みされた夏休みの課題を早速リュックに詰め込み始める。
その様子を見て私も頑張らないとな、と詰め込み作業を始めた。
私の学校は明後日から来月の二十五日までの三十七日間の長期休暇の予定。
でも来週の月曜から夏期講習が始まるので実質夏休みが始まるのは来月からだった。
寮生全員で過ごす最後の夏休み。
蝉の鳴き声と先生の話を受け止めながらどうやって過ごしていくか脳内で計算する。
とは言っても三年生は私達よりも長く夏期講習があり、と言うかほとんど夏休み期間は無くあるとしてもお盆休みくらいで就職やら進学やらで本気モード。
その邪魔をしないのが私とのんちゃんの密かな課題である。
放課後、既に講習が始まっている神ちゃん達とは帰れない私はのんちゃんと一緒に帰ることにした。
「 俺らも一年後は必死になって勉強せなあかんねんな〜。全然想像できひん 」
「 それよりものんちゃんと二人で寮生活を送ることになるのが全然想像できない 」
「 あー、確かにそうやな。二人だけってなんか…同居っぽくない？ 」
「 普通に無理(笑) 毎日喧嘩する自信ある… 」
「 無理って(笑) なんか知らんけどショックやわ(笑) 」
肩を落として歩くのんちゃんの髪色は太陽の光で明るくなっている。
長期休暇で髪を染める人がたくさんいそうだ。
少しでも夏を楽しめたらいいな。
笑うのんちゃんの横顔を見ながらそう思った。
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作者名：ひよこ | 作成日時：2019年5月17日 18時
