嫉妬 ページ12
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しばらく廊下で待っていると、神ちゃんが職員室から出てきた。
私達を見つけて近づいてくる彼の表情はどこか嬉しそう。
「 もしかしてずっと待ってたん? 」
「 帰ろうとしても神ちゃんと帰りたい言うて聞かへんかった 」
「 なんやそれ可愛いなあ。じゃあ帰ろか 」
「 何を話していたのか詳しく聞いてからじゃないと帰りません 」
「 出た(笑) ほんま神ちゃんのこと大好きやんな(笑) じゃあ俺は先に帰るわ 」
そう言ってしげは近くの階段を足早に降りていく。
「 何の話って…俺の隣の女子見た? 」
「 ガン見したら会釈された 」
「 そうなん?その子な、月曜から一ヶ月くらい俺のクラスで授業受けるんやって。アイドルらしい 」
「 は!?!? 」
思わず大声を出す私の口を右手で押さえられた。
このシチュエーションにキュンとする私の気持ちを知らない神ちゃんはそのまま続ける。
「 有名ってほどじゃないらしいんやけど、仕事の都合なんやって。あとな、その子俺の隣の席やねん 」
神ちゃん本人の口から隣の席と単語が出た。
押さえていた右手を離してうーんと腕組みする。
「 教科書見せたりグループなるときは机合わせたりするけど…こればかりはしゃーないから…な? 」
「 か、顔が近づくこともあるよね、時と場合によるけど… 」
「 んー、教科書見る時は多少… 」
「 嫌すぎる 」
「 大丈夫やって!何もしやんから! 」
「 本当に何もしない?あ、可愛いとか思ったりしない?それは無理だよ 」
「 顔は俺の好みちゃうから 」
「 中身にキュンキュンして好きってなったりしないよね、泣いちゃうよ 」
「 大丈夫。しげも言うてたけどほんっまに俺のこと大好きやんな(笑) ヤキモチ妬いてんの?(笑) 」
「 普通に妬くわ! 」
拗ねたようにその場を立ち去ろうとする私の左手を掴んで悪戯に笑うと、Aだけやで、そう言って歩き始める。
こういうところなんだよな〜。
「 もしかして気ぃあるんかなって思ったらその子の前でAとちゅーしたるわ 」
「 それはしなくていい(笑) 」
「 妬いてるくせに 」
「 こっちから見せることはしなくていいってこと 」
「 大人やな 」
「 まあね 」
階段を降りて昇降口へと向かう廊下を堂々と手を繋いで歩く私達をジロジロ見る者はいない。
誰も気にしないし気にすることない。
自然体でいればいい。
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作者名:ひよこ | 作成日時:2019年5月17日 18時