傘 ページ24
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私達に気付いた彼は怖い表情をしていた。
暗闇の中でも分かるその顔つきに昨日の優しい表情が脳裏をよぎる。
「 小瀧は出てってくれへんか？これは俺とAの問題や 」
「 いや、今Aはほんまに弱ってる。口出しせーへんからここで話聞きたい 」
「 ほんま意味分からへんわ。まあええ。A、俺と別れてくれへんか 」
「 理由を教えてほしい 」
「 お前が疎いことを理由に俺は遊びで付き合った。ほんまは俺がミサと付き合ってること知らんやろ？ 」
「 …知らない 」
「 Aが俺のこと好きやってこと知ってたし、まあ言うてみれば小瀧がいつまでも行動に移さへんから煽ってみたわけ 」
「 …煽るって何やねん。何で俺がお前に煽られなあかんの？ 」
「 口出しせーへんって言うてたやん 」
「 それとこれとは話が別や。二人が別れるのと俺が煽られる話違うやん 」
「 やってお前らいつまでも付き合わへんやん 」
「 私はしげが好きだったんだよ？望は……望は私なんかよりも他の子の方がお似合いだし 」
「 待ってA。この話は後で、今はお前としげの話やろ 」
逸れていく話に訳が分からなくなる。
「 申し訳ないけど俺はAを本気で好きになったわけやない。遊びやった。ほんま申し訳ない 」
「 ……分かった。偽りでも一緒に過ごせて楽しかったよ。ミサと幸せにね 」
大好きな姿を最後に見納めし、溢れそうな涙を堪えて小走りで教室を出た。
本当はそんなに簡単に了承できないし、私を騙したことに対してもっと謝罪がほしかった。
でも望が以前言ったように、周りを見ていない私も悪い。
もっと周りを見ていればしげがミサと付き合ってることも、二股になってしまうことも気付けていたはず。
仕方ないと言い聞かせて誰もいない自分の教室へ入る。
席に着いた途端、涙が一気に流れた。
心に穴が空いたように心細かった。
外の雨とリンクして泣いている私に傘をさすように甘い香りが全身を包み込む。
顔を動かせばすぐそこに望の唇があって、私の肩を後ろから支えるように抱きしめる彼。
私は椅子から立ち上がり、半回転をして彼と向き合う。
そしてゆっくりと彼の胸で涙を流した。
受け止めてくれる彼は優しかった。
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作者名：ひよこ | 作成日時：2018年9月15日 23時
