堕ちる ページ19
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それは初めてだったから。
人生で初めてすることだったから。
戸惑うことばかりで、
彼に迷惑をかけていないかと思うことばかりで。
でも優しくゆっくり丁寧に進むそれは彼だから受け入れることができたのかもしれない。
何もかも忘れてただ真っ直ぐ彼の瞳だけを見ていた。
男らしい体つきで優しい手で儚い口付けをする彼。
ああ、私はこの人が好きだなと思った。
この人がいれば他には何もいらないと。
そこまで私の中で大切な存在になっていた。
行為に至る前に彼の部屋へ移動した。
何も考えずにふかふかのシングルベッドへ向かった私だけど、終わった後彼の隣で天井を見上げて初めて部屋の中を確認した。
整理整頓がなされているシンプルな一人部屋。
いつもここで一日の終わりと始まりを感じているんだ。
左隣にいる彼は両腕を頭の後ろでクロスして同様に天井を見つめている。
この心臓音がベッドを動かしてしまいそうで、言い換えると心臓音がベッドを通じて彼に伝わってしまいそうで怖かった。
私だけがドキドキして彼は何の恐怖も感じていないように思えたから。
その時に彼が言った、怖かった?の言葉に思わず左を向く。
綺麗な瞳が私を見て心配そうに近付いてくる。
抱きしめて首に顔を埋める彼の息はくすぐったい。
大丈夫だったと私は返事をした。
するともっと深くまで顔を埋めて軽く口付けをする。
全身が痺れるようなそれに名前を呼ぶと、目線だけこちらに向けて悪戯に笑う。
意地悪だなと思った。
でもそれが彼のいいところ。
これが彼なんだ。
そう感じながら時間も忘れて再び堕ちていった。
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作者名:ひよこ | 作成日時:2018年9月15日 23時