二人 ページ18
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付き合って二日目のしげは、昨日と比べ物にならないくらい積極的だった。
率先して手を繋ぎ、風でなびく髪に何度も触れ、その時の彼の目は “男” だった。
昨日は一緒に曲がった角も、繋がれている右手によって真逆の左に進んでいく。
俺の家に行こう、そう言ったしげは先程とは違う優しい目をしていた。
そして何となくこの後起こることが分かっていた。
心臓が強く鳴って左手に力を入れる。
握り返す彼の左手は優しかった。
しげの家は真新しい一軒家。
数年前に少し離れたところから引っ越してきたらしい。
鍵をガチャリと開けたその意味は家族は留守ということ。
少しずつここにいる意味を理解していく自分。
扉が開くと全身を包み込むような柔軟剤の香り。
望とは違うタイプの香りに唇を噛む。
靴を脱ぎながら、両親は夜まで帰宅しないと言った。
用意されたピンクのスリッパを履いて赤のスリッパを履いたしげのあとをついていく。
リビングに案内されてソファーに座ってと言われた。
言われた通りに座ると目の前には大きなテレビが居座っており、近くの棚には食器、家族写真、人気テーマパークのキーホルダーがある。
飲み物を持ってきたしげは私の右隣に腰を下ろした。
皮肉にも渡された飲み物はいちごみるくだった。
連想するのは望で、言われたことが瞬時に脳裏をよぎる。
いちごみるくのパックにストローをさし、喉仏を動かし体内へ入れるしげ。
遠慮せんと飲んでや、そう言って私の分も同じようにストローをさしてくれる。
はい、と手渡されたパックは水分で濡れていた。
受け取って一口飲み込むと口の中にはあの時と同じいちごの味が広がった。
美味しいと言うと、良かったと返される。
でも彼が自宅に呼んだ理由はこれじゃない。
隣で笑顔を見せているけど、先程の “男” の表情が忘れられない。
彼の目を見ていると段々と目つきが変わる。
いちごみるくが入ったパックはほぼ空っぽに近い。
無の時間が流れていくのが分かった。
綺麗な瞳は私を離さない。
そしてそのまま距離は近くなる。
自然と目を瞑りその瞬間を待つ。
優しく触れた唇に全身に鳥肌が立ったと思えば、すぐに抱きしめられる。
そして私の後頭部に右手を、左肩に左手を回すと何度も何度も唇を重ねる。
息もできない激しいそれに慣れていない私は必死に彼についていくことしかできなかった。
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作者名:ひよこ | 作成日時:2018年9月15日 23時