花火 ページ20
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花火を見る前に神山くんの目的である伝説を今日も確認する時間になった。
その時間まで彼は一緒に花火を見てくれることと
もう少しここにいると約束してくれた。
私はそれだけで本当に幸せで嬉しかった。
だが、条件がよくて見れるかもしれないと期待を寄せたグリーンフラッシュは今日も見れなかった。
夏休みという期間限定で伝説を見ることはできるのか、私の方がソワソワしていた。
夕日が沈んで空も群青色になってきた頃、その足で私達は再び神社へ向かった。
今年はおばあは近所の高齢者と集まって花火を楽しむらしい。
電灯も少ない道を歩いて階段を上がり辿り着いた境内。
村の住民は誰もおらず、昼間と比べて怖いくらいシンとしていて一人では絶対に訪れたくない場所と化していた。
神山くんが浴衣を持ってきている筈もないため私も着る必要はないと思っていたけど
彼が見てみたいと言って聞かなかったので夏虫色の浴衣を身に纏った。
その姿を見せた時、神山くんは一言、綺麗と呟いた。
その言葉ははっきりと私の耳に届いてその瞬間体温が高くなるのを感じた。
何でこんなにも胸が高鳴るんだろう。
たった一つの単語でどうしてこんなに。
遠くからアナウンスの声が微かに聞こえてくる。
時刻は間もなく19時半。
花火が上がる前の独特な雰囲気を肌で感じながら
幼い頃の記憶と重ね合わせて打ち上がるのを待つ。
「 花火見るんいつ振りやろ 」
「 なかなか見る機会少ないかもしれないね 」
「 あっという間なんやろなあ 」
まだ何色にも染まっていない空を見つめて寂しそうに言った。
彼にも何か思う心があるのだろうか。
それから少しして再びアナウンスが聞こえたと思うと一筋の光が海辺から上がるのが見えた。
そしてすぐにドーンと大きな音を響かせ一つの大きな花が咲いた。
それは一瞬の出来事で、すぐに空へと消えていく。
次々と夜空に綺麗な花が咲き誇り見る者を圧倒させた。
一瞬でも輝くために生まれてきたそれは蝉の命のように短くて、儚くて、切ないものだ。
少しの休憩で神山くんは花火の音に負ける小さい声で私に聞いた。
「 見る相手、俺でよかったんか? 」
「 他に誰がいるって言うの? 」
「 ほら、小瀧とか 」
「 望はまた別の特別な人だって気付いた。
暗闇から私が抜け出せたのは彼のおかげ 」
そう思った。
今、私の心を動かすのは紛れもなく私を見る神山くんだから。
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ひよこ(プロフ) - むーむーさん» コメントありがとうございます。ドラマ化だなんて私にはもったいないお言葉です!そう言って頂けるとこれからも頑張ろうと思えます。作品を読んで頂きありがとうございました。 (2018年8月29日 21時) (レス) id: 1c4112a45d (このIDを非表示/違反報告)
むーむー - 素敵な作品ですね!とても面白かったし、ドラマ化してほしいなって思いました(*^_^*) (2018年8月29日 21時) (レス) id: 12552c9479 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこ | 作成日時:2018年7月28日 18時