涙 ページ17
.神山side
かき氷を食べて一眠りした後
一望できる神社で涼を感じていた。
口の中に微かに残るメロン味のシロップ。
夏の味、消えんといて。
「 …神山…くん？ 」
下の方から声がした。
「 何で俺の名前を、 」
「 Aから聞いた。俺の名前も知ってるはずやろ？ 」
階段を登りながら小瀧望が俺の前に現れた。
Aもおるはずやと思って近くを見たけど姿はない。
「 Aはおらんよ。隣座ってもええか？ 」
「 別にええけど、俺に何の用？ 」
ほぼ見知らぬ男同士が隣り合って座る状況に嫌気がさした。
出会って間もない俺に何の用があるんや。
「 神山…くんは 」
「 神山でええよ、俺も小瀧って呼ぶから 」
「 そう、じゃあ遠慮なく。神山は単純に伝説を見たいと思ってここに来たんか？ 」
これもAに聞いたんやろか。
小瀧の甘い香りが鼻を刺激する。
「 それともAに会いに来たんか？ 」
「 何を言うて、 」
「 神山ってオカンの名字やろ。お前ほんまは違う名字やんな 」
甘い香りは脳内を締め付けるように支配した。
何から何まで知ってるのかどこで仕入れたのか
俺はこいつが怖いと思った。
「 今の時代は凄いよな、単語を入力するだけで色々な情報が出てくる 」
「 なあ、何言うてるん 」
「 Aの両親の事故死、分かるやろ？知らんはずがないよな 」
「 小瀧、 」
「 加害者は神山のオトンなんやろ？ 」
その瞬間、右手に鈍い痛みが生じた。
小瀧は左頬を押さえて俺を睨みつける。
「 お前ええ加減にせえよっ、何も知らん奴になあ、言われたないねん！ 」
「 でも嘘ちゃうやん、Aはお前のオトンが両親を殺したなんて絶対に思わへんよな！ 」
ゆらりと立ち上がる小瀧は下から見ると巨人だった。
ちっぽけな自分が情けなく思える。
「 初めて会った雨の日、お前は俺にこう言った。
“ こいつのこと守らなあかんから ” って。
今思えば守れるわけないやろ？
これを知ったあいつがお前を好きって
一緒にいようって思いたくても思われへんやん！ 」
小瀧の怒り狂った声は神社中に響き渡る。
蝉の声も怯んだように感じた。
「 …神山くん、望… 」
俺らを見て呆然と立ち尽くす彼女は
綺麗な涙を一筋、頬に零していた。
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ひよこ(プロフ) - むーむーさん» コメントありがとうございます。ドラマ化だなんて私にはもったいないお言葉です！そう言って頂けるとこれからも頑張ろうと思えます。作品を読んで頂きありがとうございました。 (2018年8月29日 21時) (
レス) id: 1c4112a45d (このIDを非表示/違反報告)
むーむー - 素敵な作品ですね！とても面白かったし、ドラマ化してほしいなって思いました(*^_^*) (2018年8月29日 21時) (レス) id: 12552c9479 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこ | 作成日時：2018年7月28日 18時
