麦茶 ページ13
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「 風邪引くで 」
神山くんがそう言って私の腕を掴み引き寄せた。
男らしい左手が私の左肩に触れている。
初めて神山くんの体温を知って私は呆然としていた。
「 俺、こいつのこと守らなあかんから 」
そう言うと神山くんのペースで歩き始める。
何を思ったか私は足を止めて少し肌がこんがり焼けた少年
小瀧望に向かってこう言った。
「 望も風邪引いちゃうから早く家に戻ってね 」
降りしきる雨の中、聞こえたであろうその言葉に
望は口角を上げて頷いた。
帰宅した時には全身びしょ濡れで自然のシャワーを浴びたみたいだった。
心配していたおばあが玄関で待っててくれて
用意してくれてたタオルで全身を温め、水分をタオルに目一杯含ませた。
着替えをし、いつもの縁側でいつもの位置で座る二人。
おばあが用意した二つの麦茶の香りがする。
まずは何から話したらいいのか悩んでいると
先に神山くんが話を切り出してくれた。
「 …さっきの男、何やっけ名前 」
「 小瀧望。同い年だよ 」
「 大学生とちゃうの？結構身長あったで 」
「 間違えられること多いんだって 」
「 で、小瀧…とはどんな関係なん？ 」
直球に質問をしてくる神山くん。
小瀧望は中学入学と同時に関西から来た転校生だ。
両親の死から立ち直れないでいた私を救ってくれた仲のいい友人である。
隣町にある中学と高校にはバス通学で
この村に二人だけの学生である私たちは自然と一緒に登校していた。
望が教えてくれる都会の話、家族の話、友人の話。
その一つ一つが絶望していた私にとって希望の光となった。
今まで支えてくれていたのは、望だった。
何故今まで望と会わなかったのか神山くんは不思議に思っていた。
彼は夏休みが始まった八月一日から都会の実家に帰っていたのだ。
お盆ということもあり、両親のどちらかの祖父母の家があるこの村に戻ってきたのである。
だから神山くんと望は今日まで会うことがなかった。
カラン、コップの中の氷が動く音。
望の話を聞いた神山くんは地面に弾ける雨粒を見て何も話さなかった。
私も一緒になって雨が弾ける音を聞いていた。
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ひよこ(プロフ) - むーむーさん» コメントありがとうございます。ドラマ化だなんて私にはもったいないお言葉です！そう言って頂けるとこれからも頑張ろうと思えます。作品を読んで頂きありがとうございました。 (2018年8月29日 21時) (
レス) id: 1c4112a45d (このIDを非表示/違反報告)
むーむー - 素敵な作品ですね！とても面白かったし、ドラマ化してほしいなって思いました(*^_^*) (2018年8月29日 21時) (レス) id: 12552c9479 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこ | 作成日時：2018年7月28日 18時
