29.謎の少女 ページ30
目を瞑っていると、さらさらと川の流れる音がした。
心地よい風が髪をなびかせる。
乃木｢ん、…A…？｣
目を開けると、小さいAが周りの石を拾ってそれを積み上げていた。
それを見て、心底心が傷んだ。
きっと何回も何回も壊されて、それでも積み上げてるんだ。Aの生気のない目を見て、俺はそう思った。
俺が傍に居たらこんな事になってなかったんじゃ…。
無意識に拳に力が入る。
ごめん。ごめんな。今の俺にはそう謝る事しか出来ない。
俯いていると、がらがらっと石が崩れ落ちる音がした。
Aは手を止めて、石をじっと見つめている。
｢…可哀想な奴ら｣
乃木｢っ？！｣
俺の横ではっきりと、そう聞こえた。
勢いよく横を見ると、人間…に角と牙が生えていた。
俺が前にあった獄卒も人間の見た目をしていたから多分こいつも獄卒なんだと思う。
そいつはその場を去ろうと足を進めたが、どういう訳かまた止まった。振り返って目線をAに落としている。
それにつられて俺も目線を落とすと、生気のない目で獄卒を睨んで何かを言っているAがいた。
獄卒の声は聞こえるのに、Aの声は聞こえなかった。
｢……君、名前は？｣
にこにことしたまま獄卒が聞いた。
そこからは獄卒の声も聞こえぬまま、映像だけが俺の前で流れた。
獄卒とAが何かを話している映像。
それをただ黙って眺めていると、いきなりAの目に生気が宿った。
そして、こう言った。
｢乃木に会わなきゃ｣
ﾋﾞﾋﾞｯとノイズが走った後、俺の前からAと獄卒の姿は消えていた。
乃木｢…こんな所でも俺の事考えてんのね｣
嬉しいようななんとも言えないような感情に襲われていると、ふと服を引っ張られる感覚がした。
乃木｢…あれ〜、俺また"見える"ようになった？｣
俺の服を引っ張ったのは小さな幽霊だった。
その子は手に何かを持ってるようで、焦った様子でソレを俺に見せてきた。
乃木｢……これ…｣
小さな手の中で綺麗な赤のイヤリングが光っている。
｢神様、お願い、助けて｣
女の子はイヤリングを差し出してそう言った。
乃木｢…ありがとな。
俺がぜってー助けてやるから｣
俺は片手を出して女の子からイヤリングを貰った。
｢ありがとう、神様｣
そう言って女の子は消えてしまった。
乃木｢…？｣
そういやあの子、俺に触ったよな…？
ーーー
神力の通用しない不思議な少女ちゃん
ーーー
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作者名：霊来 | 作成日時：2023年7月27日 4時
