27.記憶 ページ28
カチ、カチと石がぶつかり合う音がする。
ずる、ずると足を引きずる音がする。
誰かが、こちらへと近付いてきている。
私は恐る恐る目を開けた。
｢逃げたな、2度も｣
獄卒の顔が、目の前にあった。
A｢いやっ…！｣
驚きで後ろに尻もちをつき、もう一度前を見てみると獄卒は消えていた。
なんで、現れるの…？なんで私を連れ戻そうとするの…？
乃木に会えて、ユイちゃんに会えて、ロッティに会えて…毎日幸せなのに…なんで、邪魔するの…？
これ以上…邪魔しないで…
これ以上…私の幸せを壊さないで…！！
その時、近くで何かが壊れた音がした。
ゆっくりと音の方を見ると、そこには子供の頃の私がいた。
子供の頃の私が、石を、積んでいた。
A｢なんなの…これ…｣
子供の頃の私は、虚ろな目をしたまま…言われるがまま石を積んでいた。辞めさせたいと手を伸ばしても、その手は通り抜けてしまう。
なに、この映像。
もう少しで完成しそうな時に、今度は人間の子が現れた。
…いや、人間じゃない。
人間の姿に似た、角と牙の生えた鬼…？
その鬼は、子供の私の石を壊すと、そそくさと持ち場に戻ろうとしていた。
その鬼を…私が、止めていた。
なんで鬼が止まったのかは分からない。口は動いてるけど…私には何も聞こえない。
これは…私の賽の河原での記憶…？
生き返ってからというもの、私は賽の河原での記憶を無くしている。大まかな流れは分かるけど、私はこの子に会った覚えがない。
そして何故か、私は、その鬼と仲良くなっていた。
生気のない目をした私に、鬼は永遠と話しかけている。私もそれに対して短く返すだけだった。
そんなある時、子供の頃の私はいきなりその場に立ち上がった。
そして、はっきりと、こう聞こえた。
｢乃木に会わなきゃ｣
ーーー
あの後、ユイちゃんの簡単な確認によってAはただ眠っているだけだと分かった。
でも、もうあの日から1日も経ってるのに一向に起きる気配がない。
やっぱり、夢の中で何かあったに違いない。
俺が、行かないと。任せろって、言っただろ…！
乃木｢マット、この前言ってたヤツ…できた？｣
マット｢…うん、この"夢の中にはいーるくん"があれば誰の夢だろうと入れるよ
けど…リーダー…戻ってくる時は絶対、一緒に戻ってきて。じゃないと片方が取り残されることになる…｣
そうマットから注意を受け、俺は機械を受け取った。
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作者名：霊来 | 作成日時：2023年7月27日 4時
