11.行かせない ページ12
A｢うぁぁ〜…っぐす…｣
乃木の胸で、沢山泣いた。
今まで頑張って堪えてきたものが、一気に吐き出されるような、そんな感覚。
乃木がいなくて寂しかった。怖かった。ずっと、ずっとずっと会いたかった。
そんなことを口走っていたような気がする。
それでも乃木は、相槌を打ってただひたすらに頭を撫でてくれた。
それが、暖かくて、心地よくて…例え悪いことだとしてもずっと居たいと思った。
乃木の傍にずっといたい。
会った日からずっと、乃木は私の神様で、ヒーローだったんだよ。
知ってる？
私、乃木の事が大好きなんだ。私だけの神様になってなんてわがままは言わないから、ずっと、傍にいて欲しい。
こうして、慰めて欲しい。
乃木、好きだよ。
そう思ってどれ程経ったのか分からない頃、泣いてすっきりした私の意識はいつの間にか暗闇に溶けていた。
ーーー
普段、夜中に目が覚めることは中々ない。
でもどうしてか、この日は目が覚めてしまった。
眠れないわけでもないのに、なぜか寝る気になれずにいた俺はトイレも兼ねてお風呂場に足を運んだ。
乃木｢ジョージ〜いるー？｣
なるべく小さな声でそう聞くと、ジョージは暗闇の中姿を現した。
乃木｢おーいたいた。なんか寝れなくてさ〜｣
そう声をかけると、いつものように鏡に文字が浮かび上がってきた。
"今すぐ部屋に行きなさい。彼女を止めて。じゃないとみんなが後悔する"
鏡にはそう書かれていた。
乃木｢……彼女って…｣
すぐにAの顔が浮かび上がった俺は急いで隣の部屋に向かった。
俺に迷惑が〜とか言ってたし、また変に遠慮してここ出ようとしてるんだろーな。
部屋の前について、まずは扉に耳を当ててみる。
物音はしない。けど、気配があるからまだいる…良かった。
女性の部屋に勝手に入るなんてほんとはダメなんだろうけど、緊急事態だししょーがねーよな？
ゆっくり扉を開けて中を見ると、案の定窓の外を見つめているAがいた。
部屋の真ん中にはスーツケース…。ま、予想的中って事だな。
静かに扉を閉めた後、俺はスーツケースに跨るようにして座った。
頬杖をついたまま月明かりに照らされているAの後ろ姿を見つめていると、いきなり｢…会えて、良かったよ｣なんて呟くもんだからため息をついてしまいそうになる。
振り返るAに、｢こんな夜中にどこ行くつもり〜？｣と声をかけると目を見開いていた。
悪いけど、行かせるつもりねーから。
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作者名：霊来 | 作成日時：2023年7月27日 4時
