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人の命を尊ぶ君たちといながら、私は結局、自分の知る人物の生以外どうでもいいと思っている。
前世までは仕事柄、多くの人の命を救ってきた自負もあるが、目の前の患者が生きても死んでも関係ないと考えていた。
耀哉。
君は以前私に、人として品のある考えを持っていたと言ったが、所詮私は人間にはなれないのだよ。
私の長い生の大半は鬼としてのものだ。そうでなくとも、鬼になるより前から、私は兄上以外の命に価値はないと考えていた。
私は生まれながらにして化け物であり、未来永劫それは変わらない。
けれど。
喪いたくない命が、自分の心臓を投げ打ってでも救いたいひとが、兄上だけではなくなった。
ちゃんと笑わないで読んでくれている？
いや、笑うなというのも無理があるか。好きにしてくれ。
これを最初に読むのは誰なのだろうね。分からないから、とりあえず。
炭治郎たち三人組。君たちの暴れぶりは一年生のあいだでも噂になっている。行動をわきまえたまえ。
天元、美術室に君が以前行きたいと言っていた美術展のチケットを隠してある。見つかるまで、爆破はやめておいたほうがいいよ。
「嘘だろ、昨日爆破させちまった」
しのぶはビクリと肩を揺らした。いつの間にか宇髄が背後にいて、手紙を覗き込んでいた。「会員制だから手に入れらんねえはずだが、あいつどうやって……」と苦い顔をしている。
しのぶは逸った心臓を抑えながら再び遺書に目を落とした。
アオイ。
黙っていたが自分の夜食用にこっそり余り物を持ち帰っていた。悪いね。
カナエ。
生徒からもらった恋文を生物室の裏にしまっておくのは、見るたびに気まずいのでやめてくれ。
実弥。
前世でも今世でも悪いことをした。君の弟は立派だよ。彼がいなければ私は討たれはしなかったろう。色々あるけどまずはこれだけ。
不意をつかれて胸が震える。
その後も一人一人に一言ずつ遺してあった。どうでもいいことだったり、真に迫ったことだったり。
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