壱 ページ2
夏も盛りに入ろうとしていた。海に愛される街、ここ横浜には、濃密な潮の香りが漂っている。
容赦なく差し込む紫外線は世の人々の髪に甚大なる
「悪いけど、お前、
そればかりに、唐突に突きつけられたその言葉には私も耳を疑った。目の前で憮然と私を見下ろしている店長を見やる。
「
間抜けな
「うん。
「なるほど、
そんなやり取りから数時間後、私は荷物をまとめて家路へとついていた。夜も遅くの事だった。
私が勤めていた美容院『
以前指名してくれたお客様がいつの間にか同僚を指名するようになり、指名が片手で数える程になり、その数少ないお客様を大切に、これから頑張っていこうと歯を食いしばった矢先のことだった。
ぽろ、と抱える
足が止まる。大したものも入っていない
すれ違った仕事帰りの
大通りの喧騒が遠のいていく。自分が進んでいる道が自宅に続いているのか確信は持てなかったが、引き返す気持ちにもならなかった。知らないどこかに辿り着いてしまいたいような心地もした。
どこか夢を見ているようにぼうっと歩き続ける。そんな私の目を覚ましたのは複数人の話し声だった。はっと顔を上げ辺りを見渡すが、当然知らない場所。暗く、湿っている。
「__待て。おい、誰かいるのか?」
この間抜け、ふざけるな。私は自分の不甲斐なさを呪った。
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雪 - このお話大好きです!文章もお上手で読みやすくてすらすら読んでしまいました!無理のない範囲での更新お待ちしています。 (2021年1月12日 3時) (レス) id: 0255e6d75f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕べの宝石 | 作成日時:2021年1月2日 0時