Kunzite

ストーカー:Kanta ﾘｸ ページ28

『あ！寛太さん！こっちです！』

｢すみませんお待たせしましたか？｣

『全然！今来たとこですよ！』


嘘だ。Aさんは俺が来るまで23分と40秒ほど待ち合わせ場所に立っていた。律儀で謙虚な彼女は俺の将来の奥さん。まだお付き合いは始めてないけど何れにしても近い未来そうなる事は運命だから間違いない。今日は彼女が友達との電話で見たいと話していた映画を見に行くことになっている。


『寛太さんも見たかったんですか？』

｢すごい気になったんで誘ってみたんですけど、嫌じゃなかったですか？｣

『私ほんとに見たくて！誘っていただけて嬉しかったです！』


彼女との出会いは近くのコンビニだった。ひと目見た時から彼女は俺の奥さんになる人だと気付いていた。だからこそ彼女の家を突き止め、彼女のルーティンを調べあげて彼女の行動範囲に入り、なるべく俺の存在に気付くよう過ごした。彼女が俺に声をかけるまで1年7ヶ月と10日かかったけど想定内。3年以内には交際を始めて、およそ1年で結婚する予定になってる。

腕にかけていた小さな紙袋を彼女に渡すと、きょとんとして俺を見つめた。彼女の瞳に俺が写るように、きっと俺の瞳にもこの可愛らしい顔が映ってるんだろう。


｢プレゼントです。｣

『ええ！良いんですか！』


彼女が母親にLINEで小型の卓上加湿器が欲しいと言っていたから買っておいた。そして予め開封し、中には小型のマイクを仕込んでいる。今までリビングに置いてくれたぬいぐるみからは音が拾えたけど、寝室の音は拾えなかった。これからはこの加湿器が役に立ってくれるはずだ。


『嘘！これ私買おうとしてました！！』

｢え？ほんとですか？俺これ自分に買ってみて良かったからオススメを押し付けるように持ってきちゃって...良かったら使って下さい笑｣

『え〜！もう！！こんなの嬉しすぎます！絶対に何かお返ししますね？』

｢いいですよそんなの！｣

『何か欲しいものありますか？』


貴女が欲しいです。でも今言うのは得策ではない。もっともっと距離を縮めるのが先だ。


｢ご迷惑じゃなければ...俺グルメとかに疎いんですよ。もし良かったらいい感じのお食事処に連れてって貰えませんか？｣

『それなら私寛太さんに紹介したいところ沢山あります！！ご馳走させてください！』

｢じゃあお願いします｣


お願いしますなんて言うけど彼女に1円たりとも払わせるわけが無い。既に買ってある映画のチケットをポケットの中で弄った。

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