7口目 ページ8
豪華な夕飯を済ませた後、俺は風呂に入り、布団に潜った。
時刻は12時過ぎ。
…契約の中では、
イルは俺が眠っている間に精気を貰うと言っていた。
寝ている間なら気絶状態に近いから、吸われる痛みとかそういうものは感じにくいらしい。
でも、これから吸われると思うとなんか怖い…
ていうか、まず 吸う ってどうやるんだ…？
もしかして、さっきみたいなキス…？
やめてくれよ…俺口呼吸するタイプなんだよ…
寝てる間にキスなんかされたら俺しぬ…
俺は1人悩む中…
当のイルは俺から少し離れた所で書類を開き、書き物をしていた。
恐らく学校関係の書類だろう。
そういえば、少し前に｢教育実習生は授業が終わった後にレポートを書かされる｣って山田が言ってたけど…
まさかイルの奴、それをくそ真面目に書いてるのか？
もしそうなら、律儀な奴だな…悪魔の癖に。
こいつ、そういう所あるよな…
休み時間に生徒達に優しく教えたり、あの女子との連絡の件もそうだけど。
教育実習生としての立場をしっかり演じすぎじゃないか…？
それに、俺に対しても…
あそこまで尽くす必要、あるのか…？
｢…眠れないのですか？｣
｢おわっ！？｣
突然、頭のすぐ上からイルの声が降ってきた。
先程までデスクに向かっていたイルが、
今は俺の枕元に佇んでいる。
い、いつの間にこっちに来たんだよ…怖…
音も立てずに忍び寄るとかお前は忍者か。
｢残念ながら、
私は忍者ではなく悪魔です。 ｣
｢だから心読むな…
何なのそれ特技なの？｣
｢ふふ、驚かせてすみません。
もし寝付けないのでしたら、
私が安眠のサポートをいたしますが…？｣
｢…サポートって、何する気？｣
｢催眠術をかけます。｣
｢催眠…術。｣
｢単純に眠りを誘う術です。
数秒で眠くなりますよ。｣
へ、へぇ…そんなことも出来るのか…
俺はぽかんとイルの話を聞いていると、イルは俺に顔を近づけてきた。
｢ではご主人様、
私の目をじっと見て…
考え事はせず、頭の中を空っぽにしてください。｣
｢ん…分かった。｣
俺はイルの目に視線を向けた。
…綺麗な赤い目だ。
夕方にも見たけど、本当にルビーみたいで。
長い間見つめていると、そのまま吸い込まれてしまいそう…
｢…ん…｣
何だか瞼が重く感じる。
すげぇ、本当に眠くなってきた。
…朦朧とする意識の中、閉じていく視界の向こう。
イルが不敵に笑い、口端をぺろりと舐めるのが見えた。
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作者名：みゅん | 作成日時：2020年4月25日 8時
