5口目 ページ5
『…私、実は インキュバス なんです。』
『…インキュバス…?』
『えぇ、そうです。
私達は普通の悪魔と違い、魂ではなく人間の精気を欲します。』
『せ、精気…』
『怖がらなくても大丈夫ですよ。
ほんの少し、頂くだけです。
痛いことなんてありませんし、むしろ…気持ち良いくらいですから…』
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…あの時、イルはしっかりと自分のことを"インキュバス"だと言った。
インキュバスが欲しがるのは人間の精気…
つまり、生命の源…!
俺は、こいつに毎晩 生命の一部を提供すること を代償に契約したんだった…
だから、俺気を抜けないんだ。
相手は仮にも悪魔…いつ自分の命を奪われるか分からない訳だし…
じゃあ…さっきのふわっとした感覚…何かが流れていく感覚っていうのは、こいつに精気を吸われたってことか…?
…イルの言う通り痛くはなかったけれど、何だかとてつもなく身体が重くなった気がする…。
「…さま、ご主人様。」
「…あ、え?は、はい…?」
慌てて見上げると、申し訳なさそうな表情を浮かべたイルが、俺を見つめていた。
「…イル…?」
「…ご主人様、私はこれから夕飯の支度をします。
それと…先程は失礼致しました。
まだ混乱なさっているかもしれませんし、どうぞ夕飯までゆっくり体を休めてください。」
では、と言ってイルは俺の部屋から出ていった。
…どこか、しょげている様にも見えた。
俺の事は心配してくれている…のかもしれない。
あいつの人間らしい一面に触れ、何だか心が軽くなった気がした。
俺はあいつに、
あまり怖がらなくてもいいのかもしれない。
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作者名:みゅん | 作成日時:2020年4月25日 8時