梔子 弐

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ヒソヒソ


｢ねぇ、あの女性はどなたかしら．．．｣

｢見た事のない御方ね．．．｣

｢面布を着けてらっしゃるわ．．．｣

｢お顔が見えませんわね．．．｣

｢王賁様の差す傘に入ってるわよ．．．｣

｢王家の方かしら．．．｣

｢でも王賁様は総本家の嫡男の方よ．．．｣

｢お母様かしら．．．｣

｢いえ、お母様はもういらっしゃらないと聞くわ．．．｣

｢なら誰かしら．．．｣

｢王賁様に蒙恬様に信様、そんなお強い御三方に囲まれているんですもの、きっとお偉い方だわ．．．｣

｢皇女様かしら．．．｣

｢皇女様は今いらっしゃらないはずよ．．．｣

｢あぁ、お顔が見たいわ．．．｣

｢面布から微かに覗く横顔が美しいですもの．．．｣


『．．．』

賁｢街や平民など、女はこういうものだ。気にするな。｣

『．．．うん。』


｢どんな声をなさっているのかしら．．．｣

｢きっと美しい声をしてらっしゃるのよ．．．お顔もとても美しそうですもの．．．｣

｢なんて白くて美しい肌．．．｣

｢華奢な身体．．．｣

｢良いスタイル．．．｣

｢あぁっ、気になるっ．．．｣

｢一体どなたで、どんな顔を、声をしてらっしゃるのか．．．｣


恬｢．．．しー。｣

女達｢！！｣

恬｢そーゆーのは良くないよ。確かに凄く可愛い子だけどね。あんまり人に慣れていないから、ね？｣

女達｢は、はい！！｣

｢(きっと深窓の御令嬢なんだわ．．．)｣


少しして、Aが止まる。


賁｢！．．．呉服屋だな。入るか？｣

『．．．うん。』


四人で、呉服屋にはいる。


店主｢いらっしゃいませ！坊ちゃん方にお嬢様！！お探しのものはございますかな？｣

恬｢んーん、勝手に見るね。｣

店主｢はい！何があったらお声がけ下さい！｣


店を見始める。


賁｢．．．？そっちは男物だぞ。｣

『うん。信、』

信｢ん？｣


信に服を合わせ始める。


恬｢ふふ、似合いそうなの渡して〜｣


そういう蒙恬に、服を渡す。

実は、店にこそ入ってこないものの、密かに先の女達の一部が覗き見をしている。

もちろん、四人とも気付いているが、Aが気にしていないようなので放置。

三着程を蒙恬に渡したところで、Aの手が止まる。


恬｢お？｣

『．．．試着。』

恬｢はいはい。店員さーん！｣

店主｢はい！｣

恬｢この三着、そこの信に試着させてくれない？｣

店主｢もちろんにございます。ささ、こちらへ。｣

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