梔子 弐

086 ページ36

次の日、正装で待つA。

と言ってもそんなに待たず、王賁が迎えに来る。


賁｢愛馬は連れていくか？｣

『うん。』

賁｢分かった。なら、車を俺の愛馬とAの愛馬に引いてもらおう。｣

『．．．御者大丈夫かな．．．』

賁｢．．．暴れ馬か？｣

『うん。未だに私と父上以外触れない。』

賁｢．．．どうする？乗っていくか？｣

『．．．私が近くにいればよっぽど大丈夫なはず。近くにいれば騰も触れるし。』

賁｢なら大丈夫か。車の中とはいえ、近くだしな。｣

『だと思う。』

賁｢なら車に乗ろう。｣

『うん。ありがとう。』

賁｢あァ。｣

鈴｢姫様、ご出発ですか？｣

『うん。』

鈴｢面布をお着け致しますね。｣

『うん。』


面布を着けてもらう。


『ありがとう。』

鈴｢いえいえ。こちら、羽織をお忘れにならないでくださいね。｣

『うん。』


羽織も受け取る。


賁｢．．．行こう。｣

『うん。』


王家の御車に、王賁と乗り、咸陽へ向かった。


賁｢．．．その面布は、いつものフードの代わりか？｣

『うん。流石にこの正装にあの羽織だと、バランスが悪いから。』

賁｢そうか．．．｣

『．．．顔は隠せるけど、正直外だと日除けが無くなる。』

賁｢傘を持って来ている。｣

『流石。』

賁｢ふ、日光を浴び過ぎるのはまだ、身体に障るのだろう？｣

『うん。ずっと夜に動いていたからね．．．時差ボケも大変だった。』


話しながら、咸陽へ。

この2人は、初対面の印象こそ悪かったものの、今やとても仲良し。

Aも王賁も、心做しか表情が明るく、柔らかく、よく喋る。

しばらくして、咸陽に着く。

馬車から降りる二人。

御者の人が、既に傘を用意して待っていてくれた。

傘は王賁が受け取った。


『！』


御者が、馬車から降りた2人に一礼。


『．．．楓は大丈夫だった？』

御者｢は、はい。とても良い子でした。(お嬢様とお話出来た！)｣


楓に、良い子にしているよう一声かけ、王宮へ歩いていく。

大きめの王家印の日傘に入って。


恬｢お！二人とも〜！こっちこっち！！仲良しだな‪w｣


蒙恬に呼ばれ、階段上の壁の方へ行く。


恬｢良いね〜、日傘。王家印だ！｣

『おはよう』

賁｢．．．おはよう。｣

恬｢おはよう〜｣


三人で、外で待つ。

しばらくすると、信が来る。


『．．．』

賁｢．．．｣

信｢おーっス。｣

恬｢．．．ーっス。｣

087→←085

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す