手 2 ページ2
「…それじゃあ、遠慮なく。」
暫く戸惑っていたがやがてそっと俺の手を取った。仗世文の柔らかな唇が開き、彼の鮮やかな舌が覗く。
じっとりと濡れた舌先で、人差し指を軽く突き舐るように舌を這わせる。
小さな刺激ではあるものの、仗世文が跪き俺の指を舐めるというシチュエーションも相まって、ソファの肘置きを握る左手に力が籠る。
俺の優しく手首を掴むと、舌先からだんだんと指に密着させる面積を広めていく。そのまま顔ごと上を向くように人差し指を舐め上げ、薄っすらと頬を染めて愛着さえ感じられる微笑みを浮かべる。
「吉良さん、もっと舐めていい?」
「っぅ……好きにしろ」
こくりと頷くと、再び指に舌を這わせる。
空いた手で手首をつつとなぞり、唾液で濡れた先端を、ほんの少し首を曲げてかぶりつき、時折悪戯に歯を立てて見せる。
仗世文の舐め方が上手いから、荒い息も此奴の舐め方が上手なせい。暗示をかけるようにその言葉を頭の中で繰り返す。
「ねえ、もしかしてさ気持ちいいの?」
ふと俺を見上げた、仗世文の全てを見透かすような瞳は自身の欲に溺れプライドを捨てたと、透き通った綺麗な声はほんの冗談のように告げた。何故か自分の核を突かれたようで快感の波は一瞬の内に引いた。残ったのは少々の不快感と自己嫌悪。
俺の手首を掴む手を無理矢理引き剥がし、跡が残るほど強く握り言い放つ。
「…そんな訳ないだろう。
もういい、興が冷めた。
お前はさっさと風呂に入れ、明日は早いんだろう。」
絞り出すようにそう吐き捨てると、乱雑に手を離して逃げる様に寝室へと戻った。仗世文の表情は見えなかった。見えなくても分かる。
まだ動悸が収まらない、火照った顔の熱は取れるどころか更に高まっていく。
「…こんなんじゃあ、ない筈だろ」
誰とも無しに呟いた言葉は、静かに闇へと死んで行った。
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野菊(プロフ) - お、おぉ8部の小説はじめてみました!面白いです。更新がんばってください。 (2018年12月3日 0時) (レス) id: 8aa83e8ed8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:焼き林檎 | 作成日時:2018年12月2日 0時