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約束の時間までそわそわして報告書が遅いと倉元くんにまで言われる。
「何そわそわしてんだよデートか?デートなのか?おい」
「デ、デートじゃないっ!」
「分かりやすいね、Aちゃんて可愛いな〜」
持ってた資料で脇腹をひっぱたくと、痛がっている。
「ねぇ、女の子が甘えるってどういう感じなの?あたし仕事しかしてなかったから分からないんだよね」
「相手はどんな感じなの?」
「待ち人気づかず!的に痺れ切らしてる感じ...かな」
「全て相手に任せてみたら」
「っで、出来るわけないでしょ!」
倉元くんは、椅子に座って開いてない目で真面目に話した。
「恋人作った事ないの、Aちゃん。これセクハラじゃなくて、真面目にね?普通にね?」
「それが少しセクハラっぽいんだけど...」
「例えば、抱きしめられたら、嫌じゃなければじっとしてるだけでもいいんじゃないかな?」
「そんな急展開ないと思う...」
「心の準備だよ、なかったら話して距離縮めればいいじゃん?」
「そっか...」
「頼れる上等捜査官が初恋か〜いくつだっけ?」
「27ですが」
「お兄ちゃん嬉しいな〜!」
言えなかった宇井さんと飲みに行くと、まさか可愛さ余って憎さ百倍に近かったなんて...
緊張しすぎて、その時間は早く来てしまった。
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あろう事か待ち合わせ時刻の5分前にデスクに迎えにくるなんて。
倉元くんのあんなに開いた目は久しぶりに見た。
「行こうか、A?」
そうだ...入局当時、宇井さんはあたしの事を姓では呼んでいなかった。
「懐かしいですね、その呼び方?」
「やっと思い出した?」
「うん、ちょっとずつ」
「お腹は空いてる?じゃあ、ダイニングバーでいい?」
「うん。あのね、思い出したんだよね。綺麗な顔してるから、余り見られると恥ずかしくて」
「分かったよ」
笑った顔も入局ぶりだ。
お酒も入り懐かしい話を沢山してくれた。
悪気なくあたしが忘れてしまうくらい仕事をしていたのも分かってくれた様だ。
「昇格する度にAは壇上でガッチガチだったのが、少し面白かったんだよね」
「ああいうの慣れなくて、注目されるのはちょっと苦手」
「地道だよね、いつも」
そうか、言わずに見てたのか。
「嬉しいな、あたし仕事の事ばっかりで、誰も仕事の功績しか褒めてくれないと思ってて...宇井さんがずっとあたしの事嫌ってると思ってたから、ほっとしましたよ」
「嫌えたらよかったんだけどね、嫌えなかったな。結局今でも女性としてAが好きだよ」
「ありがと」
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作者名:馨 | 作成日時:2020年3月24日 23時