限りなく白に近いグレー ページ12
ラボへ行きギノさんに聞いた。
状態が安定したら施設へ移る事、そしてまた執行官としてここへ戻って勤めを果たすと。
「ギノさん、父と認めてしまえば楽になったでしょ？正義や秩序を守るのに、監視官や執行官なんて関係ないよ」
「お前の言う通りだ。監視官なんて意地に囚われすぎてたな」
「見ててこっちも辛くなりましたよ...？今は監視官ではないの？」
「今はどちらでもない施設への移送待ちってとこだ」
全てが記録される部屋で、あたしは紙に書いてギノさんに見せた。
ー嘘つき。あたしを打ってくれるって約束したのに。
あの時狡噛さんが槙島を撃つ事と逃亡を幇助しました。あたしはもうすぐ処分される。ギノさんにはもう会えない、ごめんなさい。あたしの正義の執行は、征陸さんと縢の復讐をする事だったみたいー
ギノさんはすぐ想像が付いたらしい。
「俺たちにできる事は限られているからな...それでもお前はお前の正義を執行できたんだ、あの状態で最後までよく頑張ったな。“やり甲斐”の意味が今ならよく解るんだ...」
ただ泣く事しか出来なかった。
尊敬する先輩2人にもう会えなくなる、けど褒めて貰えた事。
「ギノさんは執行官でも大丈夫です。血統で刑事なんだから！」
「今になってお前には本当に感謝してるよ」
「ギノさん執行官になっても自分の命は大切にして下さいよ」
最後の涙を拭いて、ギノさんのおでこにキスをした。
「それ、あたしからのお守りです！傷早く治るといいですね？」
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部屋へ戻りシャワーを浴びる。
瓶に手を伸ばし、一粒摘む。
限りなく白に近いグレーは〈感謝〉
味はココナッツバニラだった。
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感謝か...
ギノさんは誰にも言わないだろう。
言えるならとっくにあたしを施設へ戻している。
ギノさんには、あたしも感謝してるんだよ...
見過ごしてくれている事。
限りなく白に近いグレーゾーンなあたしは、狡噛さんを追う途中で、槙島の落とした剃刀を拾い持ち帰ったの。
あがなう者の魂の輝き。
そう、それは朱ちゃんには当然ない。
あたしや縢、狡噛さんやギノさん。
係数に振り回され、それでも抗ったあたし達はシビュラの世界で、間違いなく人間として魂の輝きを持っている。
あたしは人殺しはしていない。
けれど槙島という殺人犯の言葉の意味を分かってしまう。
「シビュラに支配され人間は人間として生きる事を許されない」
皆の苦悩を見て、そう思わざるを得ない。
狂った訳ではない。
気づいてしまった、ただそれだけだ。
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馨(プロフ) - ゆりあさん» コメントありがとございます！結末悩みましたが、残された1係が直向きに活躍していたので悲劇にしました。最後の3ページは本当に言葉を選び書きましたが、ゆりあさんが全てを汲み取って読んでくれたので嬉しさと感謝しかないです。本当にご愛読ありがとうございました！ (2021年9月2日 11時) (
レス) id: 1060b5bb4b (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - 私も彼の最後を飲み込むのにはかなりの時間がかかり、乗り越える事は未だに出来ていません。それぐらい、やるせない終わりだった様な気がします。彼女の葛藤や、最後の選択が、彼女なりの愛と覚悟だったように感じました。心に残る作品をありがとうございました。 (2021年9月2日 0時) (レス) id: 047cedd0b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨 | 作成日時：2020年2月8日 5時
