大切な残った物 ページ1
縢秀星が消えた...
みんな刑事の勘とかいう言葉をよく使ったりする。
あたしは恋人の勘で、彼はもうこの世に居ないんだと思う...
逃走なんてする人ではない。
あの更生施設での暮らしから抜け出し、皆と同じ様にこの仕事にやり甲斐と居場所という物を感じた人だ。
そんな人を忽然と消せてしまうシステムだ。
秀くんの言う通り、この世界はクソすぎる。
あたしも1係だし槙島の件に集中しなければいけないし...それが彼のための復讐になると信じている。
狡噛さんやみんなまで、そういう結末にはさせちゃいけないんだ。
ちゃんと理解して付いていかない思考で必死に動いている。
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朱ちゃんは優しかった。
どうしても、と頼み込んだら彼のデスク上の私物を処分した事にし、箱に詰めて全てをあたしに渡してくれた。
これも恋人の勘だ。
朱ちゃんも狡噛さん同様何かを知っているのだ。
皆が帰った後、あたしは自分のデスクのキーボードとスツールを持ち主不在のその席の物と全て交換した。あたしが使う物は、彼の物。
惜しむ様に撫でて...我ながら狂ってると呆れた...そして、ただの犬小屋の様な宿舎へ戻った。
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秀くんが部屋で飲んでいたワインを開けテーブルに置き、横に佇むジェリービーンズで一杯の瓶を眺めた。
何故あの時一緒にノナタワーに向かわなかったのか。
確かに暴動鎮圧のため人手は足らなかったけど、いつも事件の時はバディの様に一緒だった。
何故あの時だけ...？
最後に交わした言葉は何だっけ？
((しっかりな！後で！))
あぁ...そうだった。
「帰り...遅過ぎじゃん...」
ベッドサイドのテーブルに携帯ゲーム機とフィギュアを箱から出してそっと置く。
あたしの部屋には秀くんの着替えも置いてあるのに。
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辛くて刑事課フロアに戻る。
ふらついて誰かにぶつかった...ギノさんだ。
「酔ってる様だな...お前飯食ってるのか？何か食べに行くぞ」
食べずにただフォークを持つだけのあたしに、色相が濁ってきている、と心配する。
「大丈夫ですよ。槙島の件が片付くまでは保たせてみせます。...聞いてもいいです？解決してもあたしの色相が濁り続けて犯罪係数が跳ね上がったら、ギノさんは迷わずあたしをドミネーターで撃てますか？無理なら犯罪犯しますけど...ちゃんと撃ってくれますか？」
「善処するが、そうならないでくれ...」
恋人の死の辛さを解ってくれて、泣き止むまで背中を支えてくれた。
この人は優しい過ぎる、きっとあたしを撃てないだろうな...
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馨(プロフ) - ゆりあさん» コメントありがとございます！結末悩みましたが、残された1係が直向きに活躍していたので悲劇にしました。最後の3ページは本当に言葉を選び書きましたが、ゆりあさんが全てを汲み取って読んでくれたので嬉しさと感謝しかないです。本当にご愛読ありがとうございました！ (2021年9月2日 11時) (
レス) id: 1060b5bb4b (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - 私も彼の最後を飲み込むのにはかなりの時間がかかり、乗り越える事は未だに出来ていません。それぐらい、やるせない終わりだった様な気がします。彼女の葛藤や、最後の選択が、彼女なりの愛と覚悟だったように感じました。心に残る作品をありがとうございました。 (2021年9月2日 0時) (レス) id: 047cedd0b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨 | 作成日時：2020年2月8日 5時
