息をするように嘘を吐く君へ。(Jr.) (ページ5)

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何も変わらない朝。

いつも通りのベッドにいつも通りの机。

お気に入りのクマのぬいぐるみがベッドから転げ落ちてる。

「……夢オチ……？」

私なんていう夢見てるの？
ジャニーズからの逆ハーレム？

「何に飢えてるの…」

私はただの大学生。
クソみたいな家で生まれ育った大学生。

「あ、おはよう」

午前6時39分。
リビングの机に並ぶご飯とお味噌汁と焼かれた鰆と香の物と……それに卵焼きを加えて並べる男性。

「……誰？」

「え？あ、松村北斗ですけど。」

「ジャニーズ…？やっぱ夢じゃなかった…」

落ち込み下を向く私の頭に一つのため息が降り注ぐ。

「Aさんってそんなに俺らが嫌い？」

「はい。まぁ。」

「なんで嫌いなの？」

「なんでって…女の子の歓声を楽しんで弄んでるから…です。」

私の回答に少し呆れたように笑う松村北斗さん。

「じゃぁなんでここに来たの？」

「なんでって……私にだって抜け出したい現実ぐらいあるんです。」

「抜け出すために俺ら利用したの？」

利用って…どこまでも人聞き悪い人だな…

「だったらダメなんですか？」

「いや、だったら最後まで利用しなよ。」

「え？」

「俺らの事、ジャニーズとかどうでもいいと思えるぐらい俺らを見てよ。」

痛いぐらいの正論が胸に刺さった。

「さ、冷める前にどうぞ。」

「え？」

「今日も学校でしょ？自分のために作ったけど、きっとAさんの方が早く家を出るだろうから。」

松村北斗さんはそう言い残すとさっさとキッチンに戻ってまた自分の分を作り始めた。

「あ、ありがとうございます…。」

「どうぞ。」

久々に温かいご飯を喉に通した。

「美味しい…」

「知ってる」

この温かいご飯だけは夢オチじゃなくて良かったと思えた。

「私、父子家庭なんですよ。」

「おはよーざいまーす！！！」

口を開くと勢いよく現れた長妻怜央。

「お前早くない？」

「記念すべきAちゃんの朝っすよ？起きちゃいましたよ～」

温かいご飯と少しの本音とうるさい男。

午前6時58分。私の新しい朝は始まった。