おりられない ページ20
私、冠城 先軌は緊急事態に巻き込まれてます。
棚の上の資料を取ろうとしたら、脚立が横倒しになり、懸垂しているような状態です。資料も落ちて地面からの高さもそれなりにあるので降りるにも降りられないんです。
「タスケテ……」
ここの資料室には人気がない、誰も来ないから余程のことがなければ助けてもらえないのだ。
「なんでこんなことに……」
脚立の最上段に登ろうとした時、足を滑らせてしまい、横倒しになってしまった。片手ではきつかったし、置き直そうとしたら手も滑った。
「ううう……」
今日はサイト内にほぼ人がいない。解剖も終わったから八岩くんも帰っているだろう。
落ちる覚悟を決めつつ、助けを待つことにした。
「あがががが……う、腕、腕が……しぬ……」
腕は10分程度で悲鳴をあげ始めた。
痛い、このままでは明日の業務にも支障が出る……!
もう少し持ちこたえなれば。
「あ……あ……」
20分くらい経っただろうか。手にも力が入らなくなった。
棚の板をよく掴めない。
「あっ……落ちる……」
重力に逆らわずに落ちてゆく感覚。速度が増していく。
「間に合ってくれ!」
そんな声とともに、何かに受け止められた。地面への直撃は避けられたようだ。
「危なかったですね」
「八岩くん……すいません……」
「いいさ。忘れ物を取りに帰ろうとしたら、中々帰ってこないって言われたので」
「そんなことが……」
資料を拾い、八岩くんと自室に戻っていった。
「今度から1人で資料室に行くのは禁止の方向で」
「はいぃ……」
八岩くんの運動神経に助けられ、彼を見直した。
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作者名:アイン | 作成日時:2019年12月23日 21時