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43話 ページ6

渚side
目の前にいるのは死にかけた傑だった。
「最期に見るのは君たちの顔か。家族たちは無事かい?」
「揃いも揃って逃げおおせたよ。京都の方もオマエの指示だろ。」
嗚呼。傑はもうすぐ死んでしまうのだ。目頭が熱くなる。たった三年間いや、三年間も一緒だったのだ。
「まぁね、悟とちがって私は優しいんだ。あの二人を私に殺られる前提で、乙骨の起爆剤として送り込んだな。」
「そこは信用した。オマエの様な主義の人間は若い術師を理由もなく殺さないと。」
なにも言えない。何かを言ったら泣いてしまうから。
「クックックッ信用か。まだ私にそんなものを残していたのか。コレ返しといてくれ。」
「小学校もオマエの仕業だったのか!!」
「まぁね。」
「呆れた奴だ。…何か言い残すことはあるか。」
涙が溜まって傑の顔がぼやけて見えない。
「…誰が何と言おうが非術師は嫌いだ。でも別に高専の連中まで、憎かった訳じゃない。ただこの世界では私は心の底から笑えなかった。それと、渚。そんな顔しないでくれ。せっかく綺麗な顔が台無しだよ。」
『傑ッ…』
「君は優しすぎる。何でも背負って転けるんだ。たぶん、今でもいろんな情報を背負ってただひたすら誰かのためにうごいてるんだろう?」
『何、言ってるの!優しすぎるのは傑でしょ…』
「無理だけはしないようにね、渚。それと、私は高専の時君のことが好きだったよ。明るくてひたむきで面白い。楽しかったなぁ、あの時は。」
『傑…。』
ごめんね、傑。私は大事な友達としか思ってなかったよ。ごめんね、傑。助けられなくて。話を聞いてあげなくて。私はあなたに幸せになってほしいのに、のに。私は、悟はあなたを殺 す。
『傑ッ…今までいっぱいいっぱいありがとうッ…』
たぶんひどい顔だろう。涙でボロボロだ。
「悟。渚を頼んだよ。」
「言われなくとも。…傑。」

「はっ。」
泣きそうな嬉しそうな顔で悟が言った言葉に反応する。
「最期くらい呪いの言葉を吐けよ。」
バシュ
悟の攻撃によって傑は息を引き取った。古い文献に載っていた肉体の乗っ取りがないよう私たちはすぐ、火葬した。
『ごめんね、悟。』
「…何が?」
『傑を殺す役をさせてしまったこと…』
「いいんだよ。逆に俺以外誰が傑を殺すんだよ?」
優しく私を撫でる悟。その大きい手に安心してしまう。
「そんなひどい顔じゃ憂太たちに会えないよ。」
『そんなにひどくないもん。』
そういいながら乙骨たちのところへ向かうのだった。

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作者名:チョコミント | 作成日時:2022年7月11日 19時

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