◎ 癒し系彼氏【桃】 (ページ10)

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彼女の携帯から、メッセージが届く。

この時間に珍しいなあと思って、閉店準備をしながら確認してみる。

A濵田です。望、Aのこと迎えに来たって。お前の力で癒したって

そのメッセージだけが送られてくる。

普段ならこんなこと絶対ないから、途端に心配になって。

「 A…頑張らんといてって言うたのに」

鍵をかけて、走り出す。

Aの携帯に電話をかけてみても、繋がらない。

こりゃ、泣いてるかもしれない。

会社の入社証を見せないといけなくて必死に説明してると、

運良く重岡さんが降りてきてくれて、通してくれた。

「前回はすっと入ってこれたのにな？(笑) 」

「警備員さんが違ったみたいです(笑) 」

エレベーターで上がっていく時にも、たわいもない話をして笑かせてくれる重岡さん。

扉が開くと、たくさんの部屋がある。

「こっち、着いてきて」

重岡さんについて行くと、ある部屋の前で立ち止まって。

中に入ると、ティッシュを持ってオロオロしてる崇裕くんと、目が真っ赤になってしまってるA。

『のぞむ…っ』

「どうしてん、外で泣くなんて？」

外で泣くなんて珍しくて、俺も驚いてしまった。

立ち上がって俺に向かって歩いてくるAを、

両腕を広げて受け止める。

ほんまにもう、頑張り屋さんなんやから。

「 …言いたくないやろうけど、言ってもらうよ？」

『やだぁ… 』

「やだちゃうの。ちゃんと俺に聞かせて？」

抱きしめながら頭をポンポンしてあげると、

だんだんと濡れていくのがわかってくる俺のTシャツの胸あたり。

『 …コネって、言われてっ、』

「わたしのせいで契約ダメになった」って、責任感じてるA。

「 A、それはちゃうで？」

『たかひろっ、』

「 Aが責任感じることなんかなんもないし、

契約取るかとらんかは俺が決めること。Aのせいなんかやない。」

それだけサッと言うと、帰って行った崇裕くん。

落ち着いてきて、重岡さんにも帰ってもらった。

『のぞむ、ごめんね… 』

「 A、ハグしよう？」

ハグして、Aの心を癒してあげるから。

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