◎ 癒し系彼氏【桃】 (ページ40)

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【叶わない】ページ40

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この気持ちが恋だとわかったのも、

この恋が叶わない恋だとわかったのも、すべて同じ瞬間。

Aが涙を流してるときだった。

「大丈夫お前らなら。大丈夫やから」

ｰ大丈夫ｰ

この言葉しか言われへん俺は、どんなに頭が弱いのか。

心が弱いのか。

『のぞむ…っ』

Aを泣かせられるのは望だけで、

Aを泣きやめさせることをできるのも、望しかおらん。

俺には、どうするのともできひんねや。

当たって挫ける前に、当たらなかった。

あたらずに、挫けてしまった。

叶わない恋だとわかって、好きだと自覚して、無駄に意識して。

「 A…お前は幸せにならな」

眠るAに何度キスをしたいと思ったことか。

弱っているこの状態に漬け込んで俺のものにしたいと何度思ったことか。

同期で、同僚で、信頼する仲間のはずなのに。

いつからだろう、俺がこんな気持ちを抱いたのは。

それはきっと、初めてあった日から。

新入社歓迎会よりももっと前、入社式よりも前、面接の時やった。

たまたま隣どうしで座ってた俺らは、すぐに意気投合した。

年下のくせに大人なところとか、たまに見せる天然であほなところ。

こいつの彼氏は幸せなんやろうなぁ、なんて、漠然と考えていた。

淡い期待を抱いて。

でも、そんなのは一瞬で儚く散ることになる。

初恋、なんてものはとうの昔に捨てた。

それ以来女性にはときめいてこおへんかった俺が、

初めてあったAに、しかも年下に心を奪われた。

『重岡くんコーヒーの時間！』

「お前飲めへんやんけ(笑) 」

ふわっと笑うAの笑顔に、いつもいつも心臓がはやく動いた。

『重岡くん、これ書類ね』

会議の書類をまとめて、俺に持ってきてくれた。

仕事がはやいのも、惚れる要素だった。

『ねぇ重岡くん、』

“ しげ ” とは、いつまでたっても呼んでくれへんかった。

重岡くんと呼んで、俺の顔を見る。

なんど、その顔に、髪に触れたいと思ったか。

「しげって呼べや！！」

『嫌だ、年下だもん』

こんな時それを使ってくるAは、ひどく鈍感な女やと思う。

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