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道案内をしたあの日、何故か彼に気に入られたらしく、毎日わざわざ3年生の棟までやって来る。
それがかれこれ1ヶ月ほど。
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「よーやるよな、毎日」
くっくっくっ、と喉を鳴らす隣の席の重岡。
「…他人事だと思って」
「やって、他人事やもーん」
ズズズッ、とオレンジジュースを吸い込みながら、
心底可笑しそう。
そりゃあ人のことだと思って見てれば面白いかもしれないが、こっちの身にもなってほしい。
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「あ、小瀧くんだあ」
同じクラスの女子にあっという間に囲まれる彼。
どうやら入学当初からイケメンが入ってきたぞと噂になっていたらしい。
そりゃそうだ、あんだけ身長も高くて整った顔立ち。
俳優やらアイドルやらに興味のない私でも、彼が世間でいうところの、イケメンなんだってことは分かる。
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「ども、小瀧くんです！
…3年の先輩って可愛い人多くないすか？」
おまけに、口も上手いときたもんだ。
そういう気の利いたことが全くできない私は、
素直に感心してしまう。
小瀧くんのおかげなのか、
一気にガヤガヤと盛り上がる教室。
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「あたしだったら小瀧くん、めっちゃ可愛がるのにぃ」
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…やけに大きく聞こえる明らかな敵意。
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冗談ぽく言う猫撫で声から感じる、棘。
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私は世渡りが上手い方じゃない。
愛想笑いも下手くそだし、話を合わせることも出来なくて率直に意見を言ってしまう。
そんな私だから、こうやってちょっとしたことがきっかけで周りを敵に回してしまうことは珍しくなかった。
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「だいじょーぶだよ、小瀧くん！
ウチらにもいっつも無愛想だもん」
「え、まじっすか！先輩たちにもそうなんや！」
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ただ上手く話を合わせてるだけの小瀧くんの声が、
もっともっと大きく聞こえる。
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「おい！しょうもない…」
「しげ！！いいから、」
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慣れてるから。
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作者名：華粉 | 作成日時：2020年5月19日 21時
