今日も好きです、せんぱい (ページ1)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:10,173 hit

1 ページ1

「お前んとこのワンコ今日も来てんで」

「え？」

顎でツンと指された方に目線を向けると

.

.

.

.

「Aせんぱーーーい！！！
　おはよーございます！！！」

…廊下からこちらにブンブンと手を振る、キラキラした目の2メートル級の巨人。

この異様な光景が、最近もはや恒例と化している。

.

.

.

.

.

遡ること1ヶ月。

桜も散り始めた頃。

先生たちの謳い文句は、"3年0学期"から

"いよいよ3年、受験だ"に変わった。

「…はー、」

その日は何となくそれが憂鬱で、授業開始早々、女の子の日を理由に抜け出した。

本当はお腹なんて痛くないけど。

保健室で適当に一眠りして戻るか、とか考えながら歩く。

.

.

.

廊下にポツン、と佇む人影。

栗色のくるくるの髪の毛。

すらーっとした高い背。

私とは違う緑色のスリッパ。

1年生だ。

ずいぶん目立つ子だな。

.

キョロキョロと不安そうに周りを見渡してる。

友達とはぐれたのかな。

.

.

.

「あの…どうかした？」

まあ、サボってる身だし、
いいことの1つぐらいしとくか。

とか、そんな感じの気持ちで声をかけた。

.

.

振り返ったその子は、

近づいてみると思ってるよりでっかくて、

でも見上げたところにある顔はとってもキラキラの目をしてて、

でっかいプードルみたいだなってボーッと思ってた、気がする。

.

「えっ、あ、」

.

目が合うとすごく驚いた表情。

人間ってそんなに目でっかくできるのか。

.

「あ、びっくりさせた？ごめんね。
　なんか困ってるように見えたから」

「…あ、いや！そうなんです！！
　化学室の場所、わかんなくて、
　みんな先に行ってもうて…」

「あー、それなら…」

長くはない説明の間、やけに目を見ながら話を聞いてくれる。

いや、礼儀正しい子なんだろうけど、

そんなに見られるとちょっと恥ずかしい。

.

.

「…行けそう？」

「…はぁ」

礼儀正しさの割に、気の抜けた返事しかしてくれない。

「…聞いてた？」

「…ほぉ」

.

.

なんだぼんやりした子だな、と思いながらも、

「じゃ、私もう行くね。」

その場を後にする。

.

.

.

「あのっ！！！」

.

.

と、右腕をガシッと掴まれる感覚。

「…です」

「え？何？」

.

.

「…おれ…せ…です」

「…？あの、分かんなかったんなら一緒に、」
.

.

.

「俺、せんぱいのこと好きです！！」

.

.

.

.

.

「…え？」