僕等の英雄仮令録【HA*IF】 (ページ10)

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8話ページ10

「ヒーローチームはヴィランチームに、確保のテープを巻くか核を回収出来たらクリア、ヴィランチームはヒーローチームにテープを巻くか、核を守り切れたらクリアよ。制限時間は15分。頑張りなさい！」
星璃がルールを説明したすぐ後、紅夜と綺星、凪流と大狼の戦闘訓練が開始された。

「先手必勝！」
核を探そうと、走り出した凪流と大狼の行く手を開始直後に阻むのは紅夜だ。
彼は先ず、戦闘において凪流より強そうな大狼に力強いパンチを打った。
元々、反射神経が鋭かったのかひょいと避ける大狼。
凪流はその隙に更に上の階に上がろうとしたが、紅夜が空中へ移動しそれを防ぐ。
「くッ！」

「大狼！作戦変更だ、お前が上に行け！！お前を“巻き込んだら”危ないからな！」
「ッ！巻き込む？？」
凪流の不穏な言葉に、紅夜は怪訝そうな顔をした。そう、彼の個性は体力テストにても明かされていない。
大狼は黙ってうなずくと、紅夜が凪流の言葉に動揺した一瞬で、あの俊足で駆けていった。
「アッ、やべッ！」
明らかに大狼を逃し焦る紅夜。
「…ならお前を行動不能にしてからだ！」
テープを伸ばし、空中から急降下してくる彼に凪流は『待ってました。』と言わんばかりに、両手を突き出した。
その白く細い指から、ラムネ色の空間が広がり紅夜を閉じ込めた。

凪流の個性は【ワンダーランド】
上限はあるが、空間を作り出し相手を閉じ込める事ができる。簡単に言えば空気凝固の様なものだが、彼の肺活量は関係なく指先から霧状のものを創り出し、それが外気に触れると形を作り固まるという仕組みだ。内部から叩いても割れたりしないが、外部からの衝撃には弱く、彼の意思で割らないと存在ごと木っ端微塵になるという、人を殺せてしまうような個性。
だからこそ、凪流はむやみに人を巻き込むのを嫌うのだ。

「よっと！少しこのままで我慢してくれ。意外と居心地いいぞ？」
悪戯に笑う凪流に紅夜は
「アリスインワンダーランド…ってか？」
と笑い返して言うのだった。