近寄るな。大嫌いなんだよ。 (ページ49)

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「俺は…運命の番なんて信用してませんから」

そう言って鞄を抱きしめて出て行ったA君。A君が言っていることはΩとして当たり前なんだと思う。ましてや被害にあったΩが思うのは普通の事。逆に僕みたいに過ごせるΩの方が少ない。そんなことはわかってるけど運命の番がいる。それに、Ωと踏まえた上でも変わらず接してくれている彼らと幸せになって欲しいと願うのは傲慢だろうか。僕は、A君には笑っていて欲しいし、幸せでいて欲しい。それをサポートするし信頼して欲しい。信用していない、なんてそんな悲しい事を言って欲しくないし。言わせるべきじゃないけど…。目は口ほどに物を言うと言うけど、ご最もじゃないかと思う。

「あんな寂しそうな目で言われてもなぁ…」

悲しそうな、辛そうな瞳だった。背中を押してやりたいと思うけどこればかりは本人次第になる。信頼していた人が実は運命の番でしたなんてA君にとっては凄く悲しかったんだろう。Ωだと言うことを何がなんでも隠し通したかったA君だからこそ、そう思う。僕は、彼を見守ることしか出来ない。大人の僕が割行ってする話でもない。A君の検査書をファイルに入れて椅子に座る。

「せんせー！Aは？！」

「エース君ノックしてね？A君は帰ったよ」

「うっそ！まじ！？ありがと、せんせー！」

騒がしく足音を立てて走っていった。A君が知らないだけで周りの子達は誰よりもA君のことを心配してる。だから、もうあんな酷いことなんて起きない。もしかしたらA君は賢いから分かっているのかもしれないけど、上手く伝えられてないんだろう。彼は、賢くて不器用だから。後は、彼が誰が運命の番か認識してくれれば簡単なんだけどそれは少し難しそうだなぁ。でも、僕がA君に出来るのはこれぐらい。あまりやりすぎてもお節介になる。程よいサポートと距離感を保つ。

「この学園の子は手がかかるなぁ、もう」

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