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「なぁ、お前大丈夫なの」
「平気。もう心配かけてらんないでしょ?」
あの事があったのに皆は普通に接してくれた。嬉しいし、凄く有難い。けど、最近身体がおかしい。ヒートが乱れ始めてきて昨日も急にヒートが始まって驚いた。抑制剤も飲んでるのにも関わらず意図せず起きるからどうしようもない。
「エースは心配症だなぁ。別に保健室なんてそう遠くないじゃん」
「うっせ。また倒れられたら面倒なんだよ」
「はいはい。ありがとね」
αに慣れたと聞かれれば違う答える。慣れた訳じゃない。ただ、少しだけで距離を近づけてみようと思っただけ。自分なりのペースでいいんじゃないかと思ったから。触れられたりするのは未だに無理だけど、少し近くなったと自分自身思ってる。俺からすればかなりの進歩なんじゃないかなぁ、と思う。
「じゃあな」
「うん、また明日」
ヒラヒラと俺に背を向けて手を振るエースを横目に保健室に入る。エイナさんには事前に説明してるから検査をする。ノックをして入ると白衣姿のエイナさんが椅子を差し出してくれる。机の上のボードを抱えて俺の目の前に座って問診をする。
「わかった。じゃあ、取り敢えず検査するね」
エイナさんの指示に従って言われた通りにして黙々と検査が進んでいく。10分ぐらい経った時にエイナさんが気まずそうに俺に声をかけてきた。
「あ、のさ…。A君って運命の番に会ったことある…?」
「運命の、番?俺の記憶が正しければ会ってないですけど…」
「そ、そっか!ごめんね。変な事聞いちゃって」
気まずそうにわらって話題を切替える。流石に流しちゃいけない話だと思ったから勇気を出して尋ねた。
「運命の番が今の俺の状態に関係してるんですか…?」
「うん…そうみたい」
ありえない。まさかこの俺に運命の番が現れるなんて。Ωで穢らわしいのに。運命の番だとしてそれは誰なのか。俺を運命の番としてみるαなんているわけないと思ってたのに。
「最近いい匂いって言うか。よく一緒にいるなぁって人いるかな?」
「えっと…。エースとデュースとフロイド先輩とジェイド先輩とマレウス先輩ですかね」
「あ、うん、なるほどね。ありがとう」
まさかこの中にいる?それはそれで怖い。運命の番のαはΩの匂いには勝てないって聞いたことがある。もし、また、あの時と同じ様な事があればもう俺は生きていけない。自分にも、相手にも運命の番なんて俺には要らない。
「俺は…運命の番なんて信用してませんから」
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ピピ - やばいぐらい主人公が好みです! (2020年6月4日 16時) (レス) id: de2e77a72a (このIDを非表示/違反報告)
伶(プロフ) - おっふ(^^) (2020年6月3日 0時) (レス) id: 472a16cc4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田中 | 作成日時:2020年5月30日 11時