近寄るな。大嫌いなんだよ。 (ページ47)

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「A！すみません。Aの母です」

綺麗な顔でAとよく似ている。顔が真っ青で今にも泣き出してしまいそうな顔。先生が椅子に座らせて一拍置いて喋り出す。

「急に呼び出してしまって申し訳ありません」

「いえ…。学園長さんからお話はお聞きしていますけど…あの子は、Aは無事なんでしょうか、？」

「その点に関しましては大丈夫ですが少しホルモンのバランスが乱れてしまっているかもしれません。ですが、見たところ酷いものでは無いので大丈夫だと思います」

「そう…ですか」

無事だと聞いたからなのか少し安心した表情で息を深く吐き出す。先生が喋り出そうとした時扉が叩かれる。あたふたした学園長の声と女の子の声が聞こえた。Aのお母さんが驚いた顔して扉を開ける。

「マリア。Aは今寝てるから静かにね」

マリナと呼ばれた女の子は悲しそうな顔になったけど俺らを見渡して頬を膨らませて怒る。

「こんなとこで寝ちゃダメだよ！マリアが一緒に寝る」

「マリア、駄々こねないの」

「でも…あ！」

泣きそうな顔をしたと思えば瞳を輝かせたりと表情がコロコロと変わる。先生の所によたよたと歩いて小さい手で白衣を握る。

「Aの事、守って。マリアはママのことも守らないといけないの…マリアじゃ、マリアじゃAの事守れない、から…」

「うん！約束するよ。マリアちゃんは偉いね」

先生に差し出された小指に小さい小指を縋るように絡める。何を思って何を感じて"こんなとこ"呼ばわりしたのかは分からないけど子供ながらに不穏な空気があったのを察したのだろう。まぁ、俺には関係ないけど。

俺はただ壁に沿って並べられてる椅子に座ってぼーっと眺めてた。あいつがいつ起きるかなぁなんて考えて遠くを見つめる。他の皆はどっか行っちゃったし。

「早く起きろよ。ばかA…」

時計の動く針がチクタクと鳴る。溜め息が溢れ出そうになった時聞き慣れた声が聞こえて反射的に立ち上がってしまった。溜め息が安堵の息に変わったのが分かる。良かったと思う反面Aが話す内容が俺の心を抉る。この学園を去る。それは、俺にとっては考えたくない話。AがΩだったのは驚いたけど別に嫌いにならない。けどAにしか感じない苦悩だってあったはずだ。それを理解したいのは傲慢だろうか。

「あの子を…お願いします」

Aのお母さんに頭を下げられる。俺は、頭を下げられるほどの人間じゃないけど。Aを助けたいのは事実だ。