近寄るな。大嫌いなんだよ。 (ページ37)

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「そろそろ戻ろう。デュース」

「そうだな」

教室に戻るとエペルだけいなくて、エースに聞いたら先輩に呼ばれたって。よく聞くヴィルサンっていう先輩かな？エペルが帰ってくるまで駄弁ってたらしんどそうな顔して戻ってきた。

「大丈夫か？」

「大丈夫…」

見る限り大丈夫に見えない。エペルが動いた時になんかわかんないけどいい匂いがした。花みたいな。甘い良い香り。

「なんかしてる？香水とか」

「してない…ことも無い。ヴィルサンに日焼け止めを塗りたくられたんだ」

エペルの寮は美意識が高い人達が集まってて、いつ見ても綺麗な人が多い。エペルも肌とか綺麗だし何となくわかるけど、エペル自身はそういうのに関心が無い。どっちかって言ったらジャックみたいな筋肉系の方が良いらしくてよくヴィルサンとやらの事をよく愚痴ってる。

「でも、日焼けしたら痛いよ」

「Aは僕より白いからだよ。僕は焼けてもいいのに」

「でも、ヴィル先輩もお前の事考えてやってくれてんじゃねーの？」

「そうかもしれないけどあの人は鬼だよ！鬼！！」

また愚痴が始まった。こうなるとあとは聞き流すことしか出来ない。だから、頷きながら聞き流す。ジャックにヴィル先輩はめっちゃ綺麗って聞いた。一度でもいいから見てみたいよな。そんな綺麗な人ならお目にかかりたい。

「くっそ暑い…」

遠くから聞こえる蝉の鳴き声がうるさい。ぼーっと暑い気温でのせいで思考が働かない。
バタッ。人が倒れる音がした。なにかと思って振り向いたらフロイド先輩が倒れてた。駆け寄ったら人の姿じゃなくて人魚の姿。息が荒く苦しそうに悶えてる。

「フ、フロイド先輩！」

「枯れない恵み(オアシス・メイカー)！」

俺が魔法をかけるよりも先にゲリラ豪雨並の雨が降り注ぐ。大丈夫か！って聞き慣れない声がして振り向けば褐色肌の青年がフロイド先輩に駆け寄った。ザァザァと音を立てて降り注ぐ雨に打たれてゆっくりと目を開ける。

「ラッコ、ちゃん？」

「その体どうしたんだ！」

「薬切れちゃったんだ。小エビ…」

「お、俺。ジェイド先輩呼んできますね！」

何となく気まずくて走り出した。ラッコちゃんって呼ばれた子はフロイド先輩を大事に。大事に抱き締めてた。恋人かなにかなのかな。起きた時もすっごく嬉しそうな顔してた。俺の早とちりとかだったら普通に申し訳ないけど。ただ、居たくないって思った。