近寄るな。大嫌いなんだよ。 (ページ26)

今日:4 hit、昨日:17 hit、合計:154,572 hit

26 ページ26

マレウス先輩に掴まれた時。反射的に振り払ってしまった。何かあったんだろうか。何回失礼な事をすれば気が済むんだろうか。Ωだからって甘えたり、失礼な事をしていい理由にはならない。

「はぁ…」

そういえば、とふと思い出した。マレウス先輩は確実に俺のΩの匂いに当てられてる。リリア先輩はどうか知らないけど。もし、マレウス先輩が運命の番なら俺は随分と酷い事をしたんじゃないだろうか。運命の番はΩとαどちらもが運命の番だと自覚、認識すれば繋がると聞いた。どちらかが一方的に想いを寄せても。自覚しても片方がその想いを否定したり。認識しなければ成立しない。だから、1人のαに沢山のΩ(運命の番)が出来るそう。勿論、その逆もあるらしいけどΩに群がるαなんて存在する訳ないだろう。
まぁ、あんな人が俺みたいな奴を運命の番だなんて思わないだろ。
他人の心配よりもまず自分の事がある。他の事を考えている時間は俺には無いんだから。考えていた事を取りやめて布団の中に入る。

「お前あのあとどこ行ってたんだよ」

「保健室」

「え、大丈夫なのか」

「へーきへーき。あ、プリン美味しかった。ありがと、エース」

「なら、いいんだけどよ」

あのさ、って声に出かけたのを押し込む。昨日の昼食時の事を思い出した。俺は昨日青髪の人の腕を思いっ切り蹴った。多分、その時に体に負担がかかったのだと思うけど、あの人からすればそんなこと関係ない。謝りたいけどまた掴まれたりしたら嫌だな…。
そんなとこを片隅に置いていつもと変わらない学校生活を送った。昼食の時間になって憂鬱な気分で食堂に向かう。相も変わらず人が多い。どこを見ても人、人。ため息が漏れる。

「昨日はお前が俺たちを置いて行ったんだからこれぐらい我慢出来るよな？」

「うっざ…。俺購買でパン買ってくる」

「あ、待って！僕も行くよ」

昨日のお詫びとして皆と食堂で食べなきゃいけない。人が多くて目が回りそう。そもそも、家から極力出ないようにしていたのに学園に入ってから人混みに慣れようなんざ無理な話で。エペルと並びながらそんな事を考えていると後ろから大きな影が俺達に覆い被さる。

「昨日ぶりだね。小エビちゃん？」

「あ、昨日は蹴ってすみませんでした。怪我してないですか。痛くないですか」

俺より大きいから見上げる形になるけど長い腕が俺の横に伸びて反射的にしゃがむ。

「なんで避けんの！」

「見知らぬ人にハグされるこっちの身にもなってください」