近寄るな。大嫌いなんだよ。 (ページ24)

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カイラに珈琲を差し出される。わしらと真正面に座る。

「この学園でAの第2性を知ってるのはここにいる奴だけだ。だから、これからのAの対応について。少し話させてもらうぞ」

真剣な眼差し。番がいるというのもあるのだろうがこやつはΩを大切に思っている。それはわしらもじゃが本能に抗えない時が出た時。αはΩに消えない傷を残してしまう。

「不用意にAに触れるな。人混みに連れて行くな。何かあれば直ぐにここに連れて来させてくれ」

「分かった」

「あと…Aには薬を飲ませてる。その薬はお前達なら言わなくても分かるだろ？心身共に負担がかかればその薬が切れる。だから、寮内だけでも見てやってくれ」

分かった、そう言おうとした時Aがベッドから降りてシールド魔法の所まで来る。

「大丈夫です。自分で出来ます。もう、迷惑かけたくないんです」

震えて弱々しい声色で喋る。Aはどこか冷たい。淋しいイメージが強い。全て1人で抱え込もうとする所が見える。今だって。αに頼りたくないのかも知れないがわしらも先輩。困っている後輩に手を差し伸べるのは普通なものだろう。

「迷惑なんて言っておらんぞ？」

「でも…」

「そうだな。なら、今夜僕達と一緒に食事をしてくれたら許そう」

不器用なマレウスなりの優しさ。わしらはAの見張りなど容易いもの。だけど一線を引いて近寄ろうとしないAに踏み込もうとしないと一生近付けない。暗い顔から嬉しそうに。にこやかに笑う。小さな声でありがとうございます、って。不器用な後輩と寮長じゃのう。

「失礼します」

ノックが聞こえA達が入ってくる。わしらの他にセベクとシルバーがいる。だから、保健室で見た弱々しい姿じゃなく。明るい笑顔で以前座っていた所に腰をかける。なんとなく距離を取られてるのがわかる。少し寂しいけれど仕方が無い。いつものように出された食事を食べ進めるとAが食べていない。

「どうしたんじゃA。気に召さんかったか？」

「え、あ、いや。食べ方が…分からなくて…」

もじもじと恥ずかしそうに頬を染める。わしが教えてあげればいいんじゃが。近寄るのは良くないだろう。エイナはその辺の教養はカイラに教わっておるじゃろう。エイナに声をかけて食べ進める。少し不器用で美味しそうに食べるA姿は愛らしい。幼い子を見ておるようで和む。

「美味しかったです」

「そうか。また来ると良い」

エイナに目配せをして笑う。

「はい！」