Realize!

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「なあマルちゃん」

「先生な〜」

「横山って何もん？」

「え〜？横山先生？普通の日本史の先生やん」


子供は敏感だ。

普通は歳をとるにつれて鈍くなる。

10歳を過ぎれば気配すらも感じなくなるのがほとんどだ。


「……なぁんか、気に食わんのよねぇ」

「大倉って……今、15？」

「え？5月生まれやからもう16やけど」

「ああそうなんや」


16でここまで勘が冴えていると…
将来に期待が持てる、反面
不安もあるが。


「まぁうさんくささはマルちゃんの圧勝やねんけどなぁ」


これも、大方間違いじゃない。


「マルちゃん聞いた？2年生の女子が行方不明になったって話」

「らしいなぁ。心配やわ」

「なーんか、な〜」

「どうしたん？」

「ほんまに行方不明なんかな〜って」


まだ荒い。けれども大きな才能がある。
大倉が真実に気づくには、まだ時間がかかる。

とはいえ、僕ひとりで解決できる問題でもないんやけど。


「早く、見つかるとええよね」

「う〜〜ん、っていうかさぁ……」


でもこの問題に生徒を巻き込むわけには、いかない。


「なーんか嫌な感じするわ」

「昼飯でも食いすぎたんやろ？どうせ」

「そんな食うてへん」


大倉はよく僕が私物化している準備室に来る。

僕はただの国語教師なのでほぼ必要ないのだが、親切な村上先生のお陰で狭いけれどもいい場所を貸していただいている。

___少し、訂正する。

「ただの」国語教師とは言えないかもしれない。
僕がこの学校に赴任した理由は、
あまりにやっかいな存在が目立ったからだ。

少しだけ「そういった類の」物に敏感な国語教師。

それが僕だ。

大倉は1年の生徒。
成績も悪くないし運動もそこそこできるし、何より端正な顔立ちをしている。


「……意外と近くにいるんちゃうかなぁ」

「え？」

「だから、その2年の女子の人」

「そりゃそうやといいけど」

「俺ほんまに、結構近くにおると思う」




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