100万回目の告白 2 ページ2
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「おい、今日海行くぞ」
「は？」
いつものように約束もなしであいつの部屋のアパートに押しかける。
あいつの目の下のクマが、また濃くなったように思う。痩せた身体や絡まった毛先はとても健康には見えなくて、元々大きな目が痩せて窪んでいる様は、どうしようもなく……痛々しかった。
「おら、着替えろ。手伝ったろか？」
「…帰ってよ」
「ええから行くぞ、お前朝起きたらカーテンくらい開けろ」
あいつが小さく開けたドアから見える散らかった部屋が昼間だというのに真っ暗で、俺はわざとらしく顔をしかめて見せる。
「……今日はムリ」
「何がムリやねん、予定なんてないやろ」
「なくてもムリなの！うざい！帰れ！！」
あいつが細い腕で俺を突き放そうとする。弱い体になんて簡単に勝ってしまう。
俺は力尽くでそのドアを開け、彼女の部屋に入った。
こんな部屋に居ったら、そりゃ気も滅入るやろ。
籠った空気や、まるで片付けがなされてない床に目配せをして、
依然俺を追い出そうと俺の身体に軽い身体ごと突進しているあいつをぎゅっと抱きしめ、そのボサボサの頭を撫でた。
「な、アイス買ったるから今日一日付き合ってくれや」
俺の胸の中で顔を上げるあいつを見つめて、な？と顔で問いかける。
「……ハーゲンダッツ」
「はは、わかったわかった。わがままやなAは」
「……すぐ帰るから」
「ん、具合悪くなったらすぐ言えよ」
無惨に散らかった部屋でノースリーブのワンピースに袖を通すあいつを、特に意味もなく見ていた。
俺たちが知り合った中学生の時、あいつの身体はもっと丸くなかっただろうか。
……まあ、あの頃のあいつの身体なんて見たことないけれど。
俺はAを、天才だと思っていた。
俺だって勉強はできる方だったと思うけど、定期テストの学年順位なんてよくてせいぜい8位とかで、大抵は20から30あたりをフラフラする程度のよくいる秀才だった。
でもあいつは、毎度、どんな試験でも1位だったらしい。
それはあいつと同じ小学校出身のやつらから教わったもので、「1位は毎回A。2組の人」といつか俺も聞いたのだった。
今となっては、あいつ自身知識はおろか自分の強みをひけらかすような性格ではないのにそんな噂が広まっていることこそが、あいつが持っていた狂おしいほどの才能の証左だったのかもしれない。
中学生だった俺は
そんな天才少女に、ただ興味があったのだ。
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作者名：猫彦 | 作成日時：2021年2月20日 11時
