DUSTBOX0.0 (ページ39)

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スカーレット　5 ページ39

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亮を殺した犯人は、わたしが鍵を掛けずに外出したところを見て、金銭目的で家に入ったらしい。

ただ、部屋には亮が残っていて
顔を見られた犯人は動揺し、彼に襲いかかった。

無防備だった亮も必死に抵抗したが、犯人が持っていた鈍器に頭を強打され気を失った。

致命傷だった。

犯人は亮の息がないことに気づくと怖気ついて逃走。

その後わたしは帰宅して、救急車を呼ぶのが先か、警察が先か、冷静な判断は下せず、

乱れ飛ぶような叫び声をあげていたと、後から聞いた。

犯人はその後すぐ捕まったけど、だからといって亮は生き返らなかった。

『犯人がいるときに帰宅していたら、あなたも殺されていたかもしれません。あなたが生きていたことが、不幸中の幸いです』

と、警察の方だったか、誰かがわたしに言ったが、

亮にもう会えないなら

亮とともに生きれないなら

もう触れることができないなら

わたしも亮と一緒に死にたかった。

「A、もう、今日は休も」

「でも」

「ええから。疲れてるやんお前」

「疲れてないよ。疲れてるわけないじゃん。せっかく亮が帰ってきたのに。もっといっぱい、話したり……っ……」

「泣くなって…。涙拭ってあげられへんから……」

婚約した時に彼の両親とは挨拶をしていたこともあり、亮のおかあさんもおとうさんも、わたしのことは義娘だと思ってると言ってくれた。

わたしは片時も亮の側から離れたくなくて、ご両親の優しさに漬け込み、亮の仏壇がある彼のご実家に転がり込むように住むようになったのだ。

わたしの部屋に住みついた亮と、考えることはほとんど同じだった。

ちょうど一年前のことだ。

亮が死んで初めてのお盆の日に、わたしは亮の姿を見た。

焚いた迎え火の小さな灯りを頼りに、ここまで帰ってきてくれたのだ。

その時亮は言った。

『オカンたちには見えてへんから、内緒な』と。

悪戯っ子のようにニヤニヤ笑い、

仏壇に備えたフルーツを
『全部食ってええの？』と子供みたいにしていた。

_____どうして来てくれたの？

_____A、寂しがってるかと思って

わたしは亮のおかあさんやおとうさんがいる前で、ボロボロ泣いた。

おかあさん達もわたしに釣られて少し泣いていた。

わたしの涙を拭おうとした亮の手が、わたしの顔をすり抜けてしまって、

もうわたしに触ることはできないんだと察した。

わたしもまた、亮に触ることはできなかった。