アンバー 7 ページ24
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「A、男の人の家に行ってるって本当なの？」
ママは初めてわたしにそれを言った。
学校で少し噂になってることは知っていた。わたしは大学生でイケメンの彼氏がいることが鼻高く、みんなに知られることはあまり気にしていなかった。
ママも、きっともっと前からわたしに彼氏ができたことは知っていたと思うけど、放っておいてくれているのかと思っていた。
急にそう聞かれて、わたしはなんだか恥ずかしくなった。
「ママには関係ない」
「少し前に怖い事件が近くであったでしょう、気をつけなきゃダメよ。ママにやましいことがあるならもうそこへ行くのはだめ」
「はあ？意味わかんない！ママは何も知らないくせに、そんなこと言わないでよ！」
むかつく、むかつく、むかつく！
何にも知らないくせに、私たちは両思いなんだから。愛し合っていて、幸せで、ずっと一緒にいるんだから。
絶対に隆平くんだってそう思ってる。
私たちは運命なんだから。
腹が立って、そのまま逃げるように家から出た。わたしの名前を怒った声で呼ぶママの声が聞こえたけれど、無視した。
ママなんて、知らない。
わたしには隆平くんさえいればいい。
彼のアパートの呼び鈴を鳴らす。ドアを開けた彼は寝癖がついていて、かわいかった。
好き。
嫌なこと全部忘れちゃいそう。
ぎゅっと自分から彼に抱きつく。甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。
ここがわたしの居場所だ。
「どうしたん、Aちゃん」
「ねぇ、好きって言って」
「え？」
「わたしのこと好きって言って」
「……そんなに急いで大人になろうとせんでええのに」
背の高い隆平くんの熱い手が、わたしの頭をぽん、と撫でた。
「ねえ……」
隆平くんの心臓の音。
息づかい。
「……わたしのこと抱きたいと思う？」
わたしにはここだけあればいい。
あなたさえいればいい。
触って。お願い。
「……思うよ。でも、抱かへん」
彼の瞳は 相変わらず真っ暗で 真っ黒で
この狭い部屋は 薄暗くて 生ぬるくて
鼻につく 甘い 甘い 香りも
なぜか 時間が止まってしまったように
その空間が とても 危ういものである気がした
「……かわいいな、Aちゃんは」
彼の手が、わたしの肩を掴む。
彼とわたしの身体が離れると 朝が少しだけひんやりした。
「ずっとこのままでおって…………」
彼の唇が、わたしに重なる。
柔らかい。あつい。甘い。
「このまま……」
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作者名：ねこひこ | 作成日時：2020年2月13日 21時
