アンバー 1 ページ18
※注意※
この話ちょっと気持ち悪い表現あります。
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背が低くて、身長順で並ばされればいつだってわたしはクラスの一番前だった。
「前ならえ」では腰に両手を当てるポーズしかしたことがない。
ガリガリの手足に骨の浮いた胸。脂肪はないのに腹は膨れていて、それが余計に子供っぽく見えているような、そんな気がする。
小学校6年になると、女子がちらほらとプールの授業を見学するようになった。
彼女たちは決まってバツの悪そうな顔をしていて、暗い表情のままプールサイドに体育座りをしていたのを覚えている。
女の子は生理が来るって。それは大人になる証拠だって。赤ちゃんを産むために必要だって。
保健の授業で女子だけ集められた時、そう習ったけれど、なんだかわたしには違う世界の話に聞こえていた。
「2組のリンナちゃん、ヒデトくんと付き合ってるんだって」
クラスメイトが教えてくれるそんな小さなゴシップも、なんだかすごいなあと思うくらいだった。
恋人って何をするのだろう。
なんのために付き合うのだろう。
その答えは誰も教えてはくれなかったけれど、少女漫画でも月曜9時のドラマでも、両想いになったふたりはハグやキスをして、好きだと愛を囁き合っていた。
「好きな人いる？」
と聞かれることが増え、
「いないよ」
と答えるとつまらなそうな顔をされ、
「嘘だぁそんなの、教えてくれたっていいじゃん」
と勝手に叱られてしまう。
小学校の友達って、案外そんなふうに簡単にいなくなってしまう。彼女たちが言う一生の友達なんて嘘だった。
中学に上がった時、初めて袖を通したセーラー服は、相変わらずガリガリで小さな身体を少し大人にしてくれたように感じた。
鏡の前でクルクル回ると、ピシッとアイロンのかかったスカートがふわりと広がった。
ママに言われた「Aももう中学生か……。大きくなったね」って言葉に胸がこそばゆくなった。
部活に入って初めてできた先輩に少し憧れたりもしたけれど、彼に恋人がいることはすぐに発覚した。
彼の恋人だと言う3年生の女子は、長い髪の毛がとても綺麗で、背が高くて手足が長くて、そして体は柔らかそうなしなやかな曲線で描かれたようだった。
自分の胸に手を当てれば、ゴツゴツとした細い骨の感触だけで、わたしは、負けたと思って悲しくなった。そもそも、同じ土俵にも入っていなかったのだと思う。
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作者名：ねこひこ | 作成日時：2020年2月13日 21時
